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明日へのチケットの新品畳のレビュー・感想・評価

明日へのチケット(2005年製作の映画)
4.0
三章から成る、各章別監督による列車を舞台にした作品。

今の多くの日本人は、おそらくあの難民の家族を断罪するだろう。
しかしそれは、自身が法の上で"潔白である"ことでしか人間の平等性を捉えられていない事が根本にあるように思う。

「真面目さ」とは、ある大きなものに奉仕する態度である。
現代の日本人が奉仕する対象とはどんなものがあるのだろうか。経済、国、会社、学校、大衆そのもの、自分自身…。

作中の第二章、主役の青年は兵役義務により、今は亡き将軍の後家に仕えていた。自身の望みではないにしろ、彼の持つ「真面目さ」は非道な未亡人の世話という職務を全うさせようとしていたのだ。
だが、彼はその務めから自ら降りることとなる。おそらく彼の胸に芽生えた「新たな真面目さ」がそうさせたのだろう。

真面目な人間に絶対的な悪者はいない。
これは真実だ。しかし、法や経済などの人が作り出した構造が生む死角が、悪を育む事がある。構造は絶対神ではないからだ。

第三章の若者三人組は、その死角で自分達でしか決める事の出来ない正義への判断を委ねられた。
法に則った正義、道徳に根ざした正義、あるいは、正義への判断を放棄する選択もあっただろう。

それでも、彼らはその答えを自らがはっきりと選び出したのである。

彼らの持つ「真面目さ」は、もちろん鉄道会社にとっては悪以外の何物でもない。
それでも、"理不尽な貧富の差"、"人種や宗教差別"、"機会の不平等性"など自分たちを取り巻く環境との非対称性を認めた先で、
「新たな真面目さ」を芽生えさせたのである。

その「真面目さ」は決して絶対的な正しさではない。
しかし、誰かを救った。
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