デニロ

舞姫のデニロのレビュー・感想・評価

舞姫(1951年製作の映画)
4.0
1951年製作公開。原作川端康成、脚本新藤兼人、監督成瀬巳喜男。山村聰、高峰三枝子、岡田茉莉子、二本柳寛。シネマヴェーラ渋谷 脚本家新藤兼人での一篇。

「白鳥の湖」を聞くと「熱海殺人事件」を思い起こしてしまう。導入部、木村伝兵衛の台詞に被せてケレン味たっぷりの演出に度肝を抜かれる。でも、今年はバレエ「白鳥の湖」を観たいと思っています。

高峰三枝子をリアルタイムで観たのはテレビのワイドショー「三時のあなた」だった。大物の女優だったという過去形の記憶が残っている。中学生の頃だから何の興味もなかったが。本作で彼女の能面のような化粧顔を観ていると幽鬼が漂いこの世との境目にいる何者かではないかと思えてくる。やはり女優なんだと思う。彼女の顔がこの作品を支えている。

元バレリーナの妻高峰三枝子の昔の思いにしっとを抱く山村聰。彼は元々その家の書生でもあり勝手に気持ちが螺旋くれてもいる。おそらく結婚してからもずーっと妻のおもいびと二本柳寛と妻の関係を脳内でみだらに思い描いているに違いない。脚本の新藤兼人はその偏執的な山村聰のおもいを中心にしたのだろうが、監督の成瀬巳喜男はバレエ「白鳥の湖」の呪われた愛の誓いに力を入れているように思える。高峰三枝子と二本柳寛、高峰三枝子と見明凡太郎、岡田茉莉子と大川平八郎、不倫の果てストリッパーとなる高峰三枝子の弟子大谷伶子等々もはや愛の形のバーゲンセール。

そんな愛憎の物語なのだがラストでは小津安二郎の『お茶漬けの味』を思い起してしまった。悪魔の呪いが解けたバレエ「白鳥の湖」バージョン。
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