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ワン・フロム・ザ・ハートのtjZeroのレビュー・感想・評価

ワン・フロム・ザ・ハート(1982年製作の映画)
4.3
同棲中だが倦怠期のフラニー(テリー・ガー)とハンク(フレデリック・フォレスト)は大ゲンカ。
新しいパートナーを求めて、夜をさまよう…。

…そんな二人がさすらうのは、浮世離れしたラス・ヴェガスの街中。
昔のモノクロ映画のような、(真四角に近い)スタンダード・サイズの画面。
オールセットで撮影され、完璧にコントロールされた色彩と証明。
書き割りをめくるような、演劇みたいな場面転換。

映画館で観たら、もっと不思議な体験になったに違いない。
観客は映画館に入り、席に着き、スクリーンの中の劇場に入ってお芝居を楽しむ…という感覚を味わうことになる。

入れ子構造というか、マトリョーシカというか、スノードームやジオラマの中の幻想的な光景を眺めているみたい。

作り物に徹した人工的な肌ざわりの作品の中から、極めてピュアな、純粋培養したような”恋する真心”みたいなモノが浮かび上がってくるのがあざやか。

『ゴッドファーザー』とか『地獄の黙示録』みたいな殺伐とした作品の後に、こんな夢の砂糖菓子みたいなスイートな作品を撮っちゃうフランシス・F・コッポラ監督の懐の深さ。イマジネーションの豊かさ。

同じイタリア系ということで、フェデリコ・フェリーニ監督作のような祝祭感覚もある。
フェリーニのローマを、ヴェガスに移植したみたい。

『ラ・ラ・ランド』の元ネタはここにもあり、という発見も感じられるかわいい作品だった。
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