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夏の遊びのzoeのレビュー・感想・評価

夏の遊び(1951年製作の映画)
3.8
ベルイマン監督が学生時代に書いた小説「マリーナ」を自身で脚色し、初めてすべてを自分のものとして作ることが出来たという彼のお気に入りの作品だそう。

たかが10代の恋愛だと、ましてやひと夏の恋など、他人から見れば執着しすぎなのかもしれない。過去に縛られていると思われるかもしれない、けれど彼女にとっては素晴らしい経験で思い出。きっと、あれは彼女がこれからを生きていく上で必要な過去だったのかもしれない。

『草で作った指輪と24カラットのキス』

この言葉が心に残る。

エルランドが無心で奏でるピアノの調べが少し不気味に聞こえて、彼の行き場のない心が哀しみを帯びているように見えた。

彼女の悲しみはきっと消えない、彼と愛し合った日々を一日たりとも忘れることはないんだろう。けれど彼女は前を向き、新しい道を歩いて行く、彼への愛と共に自分のこれからを築いてゆく。彼を失ったことよりも、彼への愛や彼と愛し合ったその時間が何よりも大事だから。

病室から出て、廊下を歩くシーンが印象的だった。マリーナの揺らがない瞳も、彼女の後ろで少しだって悲しくない表情をしてるエルランドも、その2人の影も。そこには確かに悲しみや喪失感が漂っているのに、彼女からは絶望や失意よりも混乱や困惑、事実を受け入れられない様子が観て取れた。

ラストシーンでは、彼女の精神的な成長や覚悟が見えた。“今の幸せが大切”、その言葉が今の彼女を表している。過去や未来のことを悶々と考えて、目の前にある幸せに気づけないほど悲しいことはない。でもだからと言って、過去と未来を放り投げるわけじゃない。

バレエの舞台のシーンや彼女の練習シーンも見所です。トーシューズを履いてくるくる回る彼女の足の向こうに犬を撫でるヘンリックが座り込んでいるシーンは印象的でした。一番好きなシーンは、2人がいちごを取って食べるシーンです。
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