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ラストデイズのsingerのレビュー・感想・評価

ラストデイズ(2005年製作の映画)
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なんか、最近街中で、やたらとニルヴァーナのTシャツを着た人を見かけるなぁと思ってて。
しかも、なんか結構年配の人とか、中学生位の子なんかも、
あのスマイルTシャツとかを着てるもんだから、
「いや、っていうか、これ誰だか知ってんのかなぁ?」とか思ったりする事もあって。
で、色々と探ってたら、GUのグラフィックTシャツで発売されてたんですね。
道理でやたらと見かける筈だと、思わず納得すると共に、
ニルヴァーナとカート・コバーンって、
もうそこまでポピュラーな域に達したロック・アイコンなんだなぁと。

そんなこともあって、ガス・ヴァン・サントの「ラストデイズ」を久々に引っ張り出してきて、
もう公開から15年近くが経ったし、自分も少しは理解を深められるようになったんじゃないかと思って観返してみましたが、
やっぱもう、全っ然ダメでした。
初めて観た2006年から、全く理解が進む事は無かったし、
これは時間を超越した、「静止」の作品というか、
止まっている時を掴もうとして足掻いてるような空虚感が残るというか。
それについては、あまり深く考えることも無いとは思うけど、
多分一生このまま、前にも後ろにも進まない作品なんだろうなぁ。

それでも、この作品で使われていたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「毛皮のヴィーナス」は、
以降、何年も自分の携帯の着メロにしてたぐらいで、
そのシーンだけは、なんかずーっと忘れられなかったりしたし、
不思議な引力というか、瞬間のインパクトのある作品だったんだなぁと思い返したりもしました。

以下は、2006年の10月にブログに書いたレビューです。
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ガス・ヴァン・サント監督作品。マイケル・ピット主演の「ラストデイズ」を購入し、鑑賞しました。
凄く微妙な作品でしたねぇ。
僕はあまりニルヴァーナに思い入れが無いということは、パールジャムのレビューで書きましたが、
この作品はカート・コバーンに捧げられつつも、同時期に亡くなったリヴァー・フェニックスへ想いも込められてて。
(監督とリヴァーは親友だったそうです)
個人的にはリヴァー・フェニックスの「マイ・プライベート・アイダホ」が好きだったというのが、この作品の購入動機でした。

オープニングの焚き火のシーンなんかに「アイダホ」のオマージュのようなものも感じましたね。
ただ、「アイダホ」ではキアヌとリヴァーの二人だったのが、今作ではマイケル・ピット演じるブレイクがただ一人。
作品を通じても、主人公ブレイクの孤独感や殺伐とした雰囲気、空虚感がヒシヒシと伝わってくる描写が多かったなぁと思います。

殆ど他者との交流は無いし、ブツブツ独り言をつぶやきながらウロウロする男を観察してるような感じというか。
ストーリーも予想通りなんですが、起承転結も無く、淡々としてます。
まぁ、このテーマでハラハラドキドキの脚本書かれてもどうかなぁとは思いますが、
ちょっと観る人を選びすぎてるんじゃないかと思う位、突き放した演出は多かったですね。

一言で言うと、かなり退屈だし、無理に人に勧められる作品では無かったです。
でも、翌日は何となくその空虚感を引きずっているような一日を過ごしました。
あと、Velvet Undergroundの「Venus In Furs」。(邦題は「毛皮のヴィーナス」)
この曲が一日頭から離れなかったんですけど、作品でも重要なシーンで2回も使われてただけあってかなり印象に残りました。

何か本当に観終わった後は、「ガス・ヴァン・サント、やらかしたなぁ・・・」と思う位酷い印象しか残らなかったんですけど、
その鑑賞後、後味がジワジワとこみ上げてくるような作品でした。
言葉では上手く言いにくいんですけど、浅い泥沼をゆっくり歩かされているような、そんなスロウでロウな後味というか。
ということで、あんまり気分の良いもんではないと思いましたね。

この作品で描かれているその当時をリアルタイムで実感した世代のロックファンとして、
そしてカート・コバーンの偉大さを知る身としては複雑な思いもがあっただけに、
実際、そのカートに大きく影響を受けた人だと冷静で居られないような作品かも知れません。
でも、実際はニルヴァーナやカートが好きな人が一番多く触れるんだろうと思うし、
ロックやアートについての理解のある人じゃないと受け付けない独特の空気感が漂っているので、きっと賛否両論渦巻いたんだろうなぁと。

でも、個人的には後味の余韻という意味で、印象には残った作品だったと思います。
映像特典のメイキング、キャスト・スタッフのインタビュー、未公開シーンなんかも後日チェックしようと思います。

初回限定版は特製アウターケース仕様。ジャケットはアウターケースの方がカッコいいなぁと。
さらに、マイケル・ピットが劇中で歌う「Death to Birth」のCDも付いてますので、購入予定の方は是非初回版を!!


「The Velvet Underground & Nico」
The Velvet Underground
「劇中でスコットが聴いてたあのヤバ目な曲は何!?」という方は、このアルバムを。名盤です。
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