(20年10月31日 Blu-ray 4点)
カザフスタン人がアメリカ各地で起こす珍道中をドキュメンタリーにした、という体のいわゆるモキュメンタリー。ボラットというキャラクター自体は架空のものなのだが、カメラに写るほとんどの一般人は違う。要するにぶっつけ本番で全部撮影しているのだ(しかもカザフスタン人のふりして)。それなのに全然だれるところはないし、ストーリーとしてもちゃんと成立している。
この映画の笑いの取り方は2通りだ。まずはただの「下ネタ」。くだらない笑いでただただ純粋に笑いを誘う(人によっては笑えないネタもあるが)。そして風刺的な笑いだ。この映画のメインはそこにある。例えばロデオ会場のシーン。この場面で観客は過激な話に笑うと同時に、息を呑むほどはっとさせられる。
全員がボラットは馬鹿な外国人だと思い込み、普通では考えられないような言葉をカメラの前で吐く。この時点で立場は逆転している。コーエンは巧みにボラットというキャラクターを操り、ありとあらゆる人物、そしてアメリカの暗部を引き出している。それも面白おかしく。
こんなに笑えて、はっとするような映画は無い。稀に見る傑作ドキュメンタリー(?)だ。
(11年9月25日 iTunes 4点)