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GANTZのymdのレビュー・感想・評価

GANTZ(2010年製作の映画)
3.5
原作は大学生時代に飲み会で終電逃した時に利用していたマンガ喫茶でコツコツ読んでいたから一応既読。
酔いと眠気で朦朧としながらの読破なので正直あんまり記憶にないけど、大阪編くらいまでは結構夢中になっていた気がする。

監督は『アイアムアヒーロー』とか『キングダム』などの青年アクションコミックの映画化で名を上げる佐藤信介。時系列で言えば今作をきっかけにそうした作品を生み出してきたわけで、まだまだ粗さはあるものの、すでに気合の入ったアクションやゴア描写などにも積極的に挑んでいる意欲作だ。

ぼくはもともと原作ありきの作品が映画化されるにあたっての改変は全然肯定派で、映画として面白くなる試みであればどんどん改変してもらいたいと思っているので、今作の改変自体も一部を除いて否定はしていない。

むしろ人気キャストをこれだけ使って日テレ主体の製作委員会ガチガチの体制のもとでこれだけダークでエッジの効いた作品に仕上げたこと自体が驚きというか、今作を映画化するにあたって絶対にぼかしちゃいけないポイントとしてのバイオレンス表現を最低限なりにもしっかりと描いたことは大きく評価されるべき点だと思う。

GANTZの魅力として”得体のしれないおぞましさ”を持つ異星人の描写もきめ細かくて、ねぎ星人と田中星人という素晴らしいキャラクター造形も原作の良さを損なうことなくうまく見せていた。

何の変哲もないありふれた夜の市街地の中に立ち尽くすねぎ星人の気味悪さはそこらへんのJホラー映画とも比肩する出色のクオリティだ。

ただ、千手観音は圧倒的な絶望感、みたいなものが人間側の緊迫感も含めてもう少しスリリングに表現してほしかったけど。後半でちょっと温くなってしまった感は否めない。

ということで見始めた前半は大いに興奮したけど、後半の失速はやや残念。特に吉高由里子演じる多恵ちゃんはまさに改悪で、未熟で不完全な主人公である玄野(二宮和也)が彼女との交際をきっかけで成長していく青春譚的な側面のカギを握る重要人物なのに、その設定がまるで生きない人物像(ルックス含め)とストーリーへの中途半端な介入にはとことん気が滅入ってしまった。

いっそキャラクター自体を削ってアクション映画に振り切ってほしかったけど、興行のために大衆に受けるラブストーリー要素は不可欠だったということなのかな。

思うところはいくつかあるものの、この規模の邦画にしては雰囲気含めてよくできていたし割と楽しめた。

多恵ちゃんがどうストーリーに作用していくかも含めて、続編に期待したい。
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