ギズモX

トロンのギズモXのレビュー・感想・評価

トロン(1982年製作の映画)
5.0
【映画はもう21世紀!】

映像作品で初めて全面的にコンピュータグラフィックスを導入した80年代ディズニーSF映画。

ゲームの開発データを同僚のディリンジャーに盗まれた主人公フリンが証拠を見つけるために会社に忍びこんだものの、管理プログラム"MCP"に見つかってしまい電脳空間に送られてしまうストーリー。
あのシドミードが手がけたデザインがとても魅力的な逸品。

この映画での現実世界はとてもディズニーとは思えない雰囲気だ。
人々は昔ながらのアーケードゲームに熱狂中で、そのゲームを制作した巨大ソフトウェア会社ではMCPがディリンジャーの制御を振り切り、ペンタゴンやクレムリンにアクセスして自身の権力を拡大しようとしている。

このコンピュータを操作する人間側の不完全さや巨大企業とAIの暴走を示唆する描写は、ディズニー作品と言うよりかは、むしろ『ウォーゲーム』『ブルーサンダー』『ロボコップ』などのハイテク機器を題材にした80年代のサイバーパンク作品に近い。

ところが、フリンが電脳空間に迷いこんでしまってからはこれが一気に変わってくる。
その電脳空間ではMCPが全プログラムの実権を握っており、プログラムはMCPの許可がなければ移動することさえも許されない。
そしてそんな暗いディストピアを打ち倒そうと、警備プログラム"トロン"達がユーザーからの力を得てMCPに立ち向かっていく。

そう、実はこの電脳空間で繰り広げられるストーリー展開や構図そのものは従来のディズニー作品のそれと全く同じなのである。
先進的なアートがおりなす夢と魔法の世界。
正義の戦士が悪の支配者を倒し、世界に光を取り戻すファンタジーなおとぎ話。
それを全部"プログラム"に置き換えて、当時最先端技術の"CG"を用いて現実世界の中に構築させ、暴走する巨大企業の陰謀を阻止する話と直結させたのである。

一番重要なシーンはラストの夜景だと思う。

街や道路から放たれる美しい光の筋からは、現実の世界も、プログラムの世界も、本当は大して違わないことが伝わってくるのだから。
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