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ゴジラVSモスラの教授のレビュー・感想・評価

ゴジラVSモスラ(1992年製作の映画)
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とにかく特撮シーンが素晴らしい。ゴジラのことも、モスラのことも、作劇上の役割をとにかくわかっている川北紘一特技監督の演出が冴え渡っている。
「ビオランテ」以降、海上戦のシーンの派手さがより激しい水しぶきや揺れ動く波などによってかなりエモーショナルな映像になっている。
新怪獣バトラ対自衛隊。ゴジラ対幼虫モスラ、バトラ。
海上を炎の中爆進するモスラ。
富士山の裂け目から現れるゴジラと、国会議事堂に繭をつくり羽化するシーンとの赤と青を使った色彩的対比。など。本作の特撮シーンは怪獣描写の美しさが際立っている。

作劇も、シリーズ初とも言える「環境問題」について至極真っ正直に、「人類の自業自得」による被害を徹底的に描いている。
そこに人類にとっての災害の象徴としての「怪獣」というメタファーもストレートに機能しているし、主人公の別所哲也、小林聡美の夫婦の物語=ミニマムな個人の物語と、国家的な大局の物語の2つの軸が「怪獣」への見え方の差、意識の差を対比させている。

「特撮シーンの美しさ」「戦闘シーンのダイナミックさ」「市井の人間の物語と、大局的な物語の対比」「社会問題への提言」などのこれぞ「怪獣映画」の醍醐味をほぼ満遍なく網羅している。
しかも、それらをエンターテインメント映画としてしっかり落とし込みが出来ている点で本シリーズの中でも総合点の高い作品となっている。

勿論、冒頭のチープな「インディ・ジョーンズ」オマージュは相変わらず脚本を担当した大森一樹の「アンタも好きねぇ」と失笑してしまうし、途中で何故かいなくなる村田雄浩や、同様にケリのつかない大竹まこと側の「環境破壊をやめない人類」の問題然り、詰めの甘いところは多い。

しかし、過去シリーズの中でも、環境破壊による異常気象など災害への実感が公開当時よりも、よりリアルに迫ってくるという意味でなかなか見応えのある作品。
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