茜

月曜日のユカの茜のレビュー・感想・評価

月曜日のユカ(1964年製作の映画)
5.0
歳取ってからの加賀まりこしか知らなかった当時、若かりし頃のお姿を見て衝撃を受けた。
パッチリお目目にキャットアイメイク、ぽってりした口元にふんわりした髪型、まるで少女漫画からそのまま出てきたみたい。
それ以来、若い頃の加賀まりこが大好きになったし、今でも憧れの一人。
そんな加賀まりこの魅力がめいっぱい詰まった代表的な一本。

「フランスのヌーベルヴァーグに影響を与えた」って聞いてもヌーベルヴァーグとかよく分からないから何とも言えない。
それでも今も全く色褪せないどころか、これから先もきっと新鮮に映るであろうお洒落な映像表現がこの60年代に撮られていた事に驚く。
オープニングでユカがウインクした静止画に「Hey!ユカ!」って男の声が入って、それに反応した静止画のユカが「Hey!」って叫んで歩きだして、そのままナイトクラブのシーンに突入する。
そこからカメラはユカの動きを追いつつ、BGM的にお客や女達がユカの噂話をする台詞が投入される事で、観客はユカの人物像をスマートに理解出来る。
昔のコメディ映画みたいな早回しや、ユカのクリクリした目が印象的な顔面アップの長回し、ユカ以外の人物が喋る場面でもユカの顔を映す事で彼女がどんな表情をするのかを捉える…等々。
今となっては珍しくもない技法もあろうけど、これらの映像が可愛らしい加賀まりこの魅力と相まって、ゆったりしたジャズをバックに流れてくる…この何だか気怠くなってしまう感覚がたまらなく好き。

ユカというキャラクターに好意を抱けるか、共感出来るかというのは難しいところで、私は魅力的には思えるけど理解は出来ない。
自分にとっての幸せは男に尽くす事なのだと信じて疑わず、常に直感的に振る舞い、この子はちょっと頭が足りないんじゃないかとすら思わせる行動ばかり起こす。
そんなところが男にとっては都合よく魅力的であるという感覚は理解出来るものの現代的ではなくて、自分の性格上リアリティも感じないんだけど、だからこそ未知の物を覗き見る感覚で私は惹かれてしまう。

口癖である「キスはダメ」に隠された背景や、そんな彼女が唇を許すシーン、ラストシーンを経てこれから彼女はどう生きて行くのか。
虚無的なお話の中に、何となく逞しさを感じられるような終わり方が好き。
茜