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美女と野獣のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

美女と野獣(1946年製作の映画)
3.7
『美女と野獣』を初めて映画化したジャン・コクトーの作品。


ファンタジー感いっぱい、衣裳、セットどれもゴージャスで美しく、モノクロであることは何ら表現の制限をしないと思った。シフォンのような柔らかいカーテンが風に翻るシーンが特に印象的。ベルの自宅はフェルメールの絵をモデルにし、ビーストのお城も絵画のようだった。

ビーストは本当に野獣で、食生活を音だけで表しているが獰猛。鹿が通ると身体が反応してしまう。食後はなぜだか血だらけ!生きた動物を襲って食べているのに気づかないベルはいい人。

ディズニー等の他の『美女と野獣』は、大人向けの長い原作の一部を童話にアレンジしたもので、コクトーの『美女と野獣』は原作に近いと言われている。

そのためなのか、私はコクトー以外の『美女と野獣』を観たことがないので比較はできないが、ヒロインのベルは美しく優しく、芯の強い責任感ある理性的な大人の女性として描かれている。

ベルの絶対的な愛情をビーストに一方的に試されるのはよろしくないなと思ったけど、他の『美女と野獣』もそこは同じみたい。野獣みたいな男を聖母のような理想の女が一途に支えることで男は改心(変身)し、女にとっても理想な男に変わるという構図。野獣の見た目や素行とは違い、内面が美しいことに気づかないとならない。ビーストはベルだけに優しくて、素行は粗野で暴力的だから、心はきれいかと問われるとイエスとは言えない。でもベルは寛容だった。哀れみが先にあったからかな。男の弱さに惹かれたベル。

ディズニーのビーストのイメージが強くて、てっきり角が生えているかと思っていたら、角ではなく、よく動く猫耳で(可愛い)、私も最初は怖かったのに、猫ひげもあり、だんだんとどら猫に見えてきて、愛らしくなってきたから不思議。ビーストの魔術かな。あ、チューバッカにも似てる。

コクトーは日本の歌舞伎の獅子をモデルにしたそう。私には水谷豊の『バンパイア』の変身途中に似ているように見えた。

ちょっと前に観たので説明的なレビューになってしまったけど、美しい大人の純愛映画でした。シンプルなプロットだけど面白かったです。
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