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籠の中の乙女のleylaのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.8
不快で不気味だけど、最後まで見届けたいという思いに駆られるランティモス作品。U-NEXTで配信終了間近につき重い腰を上げて観ました。

「ロブスター」ぐらい摩訶不思議ワールド。父親に監禁され洗脳され純粋培養された息子と娘2人。外部からの人の影響によって長女の好奇心が芽生えていく。

原題は「犬歯」。犬歯が抜けたら外へ出られると教え込まれた子供たちは、まるで父親のペットと変わらない。いつまでも精神が子供のままなのに、息子には性処理の女性をあてがう父親は性に執着してるキモ男に見えた。

犬歯を抜いて飛び出した長女を映す冷めたラストショットは希望なのか絶望なのかわからなくてゾッ。単語の言い換えや奇妙なダンスの描写は好き。

父親の支配欲が異常で、母も子もそれに従うしかない狂気的な封建性は「聖なる鹿殺し」にも通じている気がした。

公式HPによると、監督は幼い頃に両親が離婚し、母は17歳の時に死去し天涯孤独に生きてきたというから、家族というよくわからないものを皮肉に描いたのかな。愛情が足りずに育ったから変態的な表現者として開花したのかも。

家族=社会あるいは会社。世の中は誰かの作った規範に従って今に至っているにすぎなくて、見方を変えるとあの子たちはあそこにいる限り平和で守られている。私たちは何が正しいか?を先入観と洗脳によって支配されているに過ぎないのかも…と、こちらも洗脳されそう。恐るべしランティモス。でもやっぱりあの父親はアタオカでキモくて許せない。

ボカシが画面半分を占める瞬間があったりして、かなり雑すぎる。ボカシは最小限にして欲しい。
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