垂直落下式サミング

籠の中の乙女の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.7
『ロッキー』と『ジョーズ』は、人の人生を変えてしまうという映画。
ギリシャ郊外の広い敷地内で、子供たちを外の世界から完全に遮断して暮らす夫婦。子供たちへの変な教育には、シャマランの『ヴィレッジ』のような確たる理由があるのかなと思いながら観続けたが、何故この夫婦が3人の子をこんなに環境で育てる事にしたのか最後まで説明はされない。観終えたのに、どんな映画なのか、よくわなんない。イタくてシュールで恐ろしく変な映画だった。
そう言えば明石家さんまが「娘のIMALUを灰皿のことを“犬”と言う子供に育てたかった」と言っていたことを思い出した。そのほうがオモロいやん、だって。狂っている。大竹しのぶさん離婚して正解。この映画が描いているものと同じおかしさだ。お笑いに限らず、人生をかけて道を突き詰める仕事をしている人って、その才能を研ぎ澄ますほどに実生活では幸せになれなくなっていくことがよくわかる。
本作は、そんなドメスティックな親子の家庭環境が、ある綻びからボロボロに崩れていく喜劇的な様を、ユーモラスですらない気まずさによって演出している。この奇抜な題材にして、凡百のアート映画にありがちな詩的なメッセージをのせようとしていないので、余計に不気味な後味を残していく。
ビデオカメラの電池切れちゃったから締めますみたいな録画終了エンディング。なのに切れ味は唯一無二。