yukihiro084

ボーイズ’ン・ザ・フッドのyukihiro084のレビュー・感想・評価

ボーイズ’ン・ザ・フッド(1991年製作の映画)
4.3
毎日、息子の元気さなのか、エネルギー
なのか、陽気さなのか、まぁとにかく
圧倒されている。

親になって、父になって、映画を観ると、
どうしても、父親側で映画を見てしまう。
クレイマークレイマー、遠い空の向こうに、
リトルダンサー、サイダーハウルルール、
マジェスティック、ビッグフィッシュ。

よく覚えている父親がいる。
(ボーイズン・ザ・フッド)で
ローレンス・フィッシュバーン演じた
父親だ。この父親がとてもいい。

舞台は80年代のロサンゼルスの
サウスセントラル地区。ほぼ同時期、
スパイク・リーが(ドゥ・ザ・ライト・
シング)で、ブルックリンを舞台に
黒人と白人の対立を描いていた頃、
アメリカの逆サイドで、ジョン・
シングルトンは、黒人同士の対立や
差別を描いていたのが今作だと思う。
黒人を殺しているのはその多くが黒人
だという、ジョン・シングルトン監督
の実体験をベースに描かれた本作。

映画は、3人の黒人少年が主人公で、
10才くらいから18才くらいまでの物語。
(隣同士の少年たち)の原題通り、
それほどギャングでバイオレンスはしていない。

3人は近所の幼馴染で育つ。
彼らは僕らとほとんど同じだ。
マンガの話。くだらないお喋り。
洒落っ気づいて、彼女も出来て、
勉学や部活に頑張り、女の子とHを
したくなったり、ポテチを頬張り、
また馬鹿騒ぎをして、グレル時期も
あったり。それはまるで日本の普通の
高校生がファミレスでお喋りをしている
ゆるい青春映画にも感じる。実際中盤
くらいでは主人公はHさせてくれよー
しか言っていない。ただ、違うのは、
日常的に銃声が聞こえたり、強盗が家に
入ったり、近所のお母さんがヤク中だっ
り、流れ弾に気をつけなさいと親から
見送られたり、空き地に他殺体が放置され
ていたり、変色した血痕について語った
り、車の中から銃口を向けられたり、
対立する黒人同士のギャングがいたり。
そんな日常の中、主人公たちは生きる。

トレは、親のしつけを守り、真面目に
育った。親友のリッキーは、アメフトで
大学を目指している。逆にリッキーの
兄のダウボーイはギャングになってしまっ
ている。リッキーとダウボーイの母は、
リッキーだけを可愛がる。
トレの父親は、息子が簡単に道を外す
ことを許さない。父親は、子供が殺され
ず、刑務所にも入らないための
(親の責任)について自覚しており、
アメリカにおける黒人への差別や、
歪な世界のメカニズムまで、息子に
わからせようとしていた。
冷静で思慮深く、頑固で粘り強い父親だ。

黒人同士で、大人や年上や親や
警察官からの暴力と呼べる差別に、
3人の主人公は怯え、泣き、傷つく。
これが切ない。
この辺りは(スタンド・バイ・ミー)
にも通じる。

終わりの見えない暴力の連鎖や死は、
救いようのない大惨事のようにも思える
が、世間や正さなければいけない大人は
そんなことを、気にも留めない。

オープニングに大きく映る赤い交通標識の
(STOP)が、まるで叫んでいるようで、
悲しかったし、ラストのメッセージが
またなんとも泣ける。

当時。最年少、監督デビュー作で、
アカデミー監督賞ノミネートになった
話題作で、(ムーンライト)の
バリー・ジェイキンス監督にも
絶対的な影響を与えた本作。
僕も当時、映画館で。
父になって観て、また思うところ
たくさんありました。良かったです。

若きローレンス・フィッシュバーン
ぜひ観てもらいたい。マトリックスや
ジョン・ウィックだけじゃないんだぜ
って魅力がある。その奥さん役が
アンジェラ・バセット。
アンジェラって昔から姐さんって感じ。
ローレンスとアンジェラって、貫禄と
言うか迫力と言うか無敵の夫婦じゃん。

(フリーダム・ライターズ)や
(しあわせの隠れ場所)と一緒に
観てもらっても、当時の子供たちの
置かれた環境とか理解できて良いと思う。
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