1984年のL.A.。シングルマザーに育てられていたトレは学校で問題を起こし、環境を変えるため、父親フューリアス(ローレンス・フィッシュバーン)のもとで暮らし始める。
7年後、将来の進路を考え始めたトレ(キューバ・グッティング・Jr.)とその仲間たちは、ある抗争事件に巻きこまれてしまう…。
黒人居住地区で育った少年たちの日常が、淡々と、それでいてテンポよく描かれていく。
家族との愛憎、初恋、将来への悩み…といったごく普通のドラマが進行していくんだけど、異様なのはその背景音として常にパトカーのサイレンとか、銃声とか、ヘリのホバリング音などが響いていること。
最初のうちは、その物々しい街のノイズにビビらされてしまうんだけど、抑えた日常描写によって、それが当たり前の生活音のように感じられてしまう。
そうして、眼も耳も作品の舞台に没頭し、自分も街の住人になったかのような気やすさを感じ始めてからシリアスな事件が起きるため、インパクトが大きい。そこら辺の緩急の呼吸というか、バランスが巧み。
巧みといえば、”我らがモーフィアス”ことⅬ・フィッシュバーンが演じる父親の、主人公トレに対する教えが印象深い。
スパルタでもなく、甘やかすのでもなく、大事なことだけビシッと短いフレーズで伝え、あとは信頼して見守る。
そのたしかな信頼という導きによって、息子トレの運命が大きく左右されたんだなあ…というエンディングも味わい深い。
フィッシュバーンは、若い頃から頼れるモーフィアス(『マトリックス』)だったんだなあ、ということがよくわかる映画😉。