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ミッドナイト・イン・パリのSのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)
4.5
私の好きを詰め込んだ作品。世界観、ストーリー、展開、メッセージ性、全てが好みすぎて自分を作る一本。

「現在って不満なものなんだ、それが人生だから。」このセリフが好き。映画自体も最高でした。「真夜中のパリに、魔法がかかる。」このキャッチコピーも好き。一度は誰もが思うであろう、「あの時代のこの場所に行ってみたい」という過去への憧れが実現する物語。

「パリは雨の日が一番綺麗なの」とっても素敵。こんなセリフが言えるような女性、憧れが強すぎる。

文句無しに可愛い、しかしワガママでなかなかに問題もあるレイチェル・マクアダムス。大人で憧れる深い女性のマリオン・コティヤール。大好きな女優さんたちがこうして出演しているのも嬉しい。



--------- この先ネタバレあり ----------





現在のパリも好き。だけど、最盛期は100年前。そう信じてやまない主人公が、真夜中に乗り込んだ車。たどり着いた先は、自分が最高だと信じてやまなかった100年前のパリ。

タイムスリップしたそこで出会ったたくさんの人物、尊敬する人、素晴らしい街並み。そのどれもが思い描いていた理想通りで、素敵。そんな中で出会った一人の女性。しかしその女性が言うには、今はそんなに良い時代ではなくて、ここからさらに100年前のパリこそが一番素敵だと言う。

「現在って不満なものなんだ、それが人生だから。」

不満に思う現代も、数十年後、数百年後の人たちからしたら"憧れの時代"になるかもしれない。時代として考えると自分自身で考えるのは難しいかもしれないけど、この映画のパリを"人生"に置き換えて考えてみてって話。

もう戻れない子供の頃、青春時代、若かった時期なんかに「あの時は良かったよなぁ、戻りたいなぁ」なんて憧れや愛しさや懐かしさやきらきらした感情やらを抱きがち。だけど実際に子供の頃や当時の自分を思い返すと、"今の自分"に戻りたいと思う日が来るだなんて一切考えずにテストの点を気にしたり友達と喧嘩したりしてて、「もうやだ!」って日々を過ごしたりもしてた。高校生の時の自分は確かに小学生、中学生の自分に戻りたいと思ってたと思う。なのに社会人になった今は高校生に戻りたいなぁと思っている。でもきっと、もっと歳を取ったら"今現在"の私も"若い頃"になって、あの頃に戻りたいなぁの対象にきっとなっている。

未来の自分からしたら、今がどんなだとしても、そのうち素敵な思い出の一つになる。いつか素敵な過去になる、戻りたいあの頃になる、そんな今を生きている。

「"今"を生きているから気づきにくいだけで、実は自分含め身の回りのどれもが素敵なものだ」。この映画はそんな素敵なメッセージを、幻想的なパリという街を舞台に、心地の良いジャズを交えて、少し皮肉の効いた台詞にのせて届けてくれる。最高にオシャレな映画でした。

ラストもとても良かった。自分が思っていた通り、行ってみたらとても素敵な場所であった1800年代のパリで生きていくことにした1900年代の彼女。そして、行く前から1900年代が一番素敵だと思ってはいたし実際に行っても最高であることはわかったけれど、それでもいつの時代も変わらず素敵だということに気がつき今(2000年代)のパリをもう一度生きることにした主人公。結局別の時代でそれぞれの信じる素敵なパリで過ごすことになった二人。お互いを嫌いになったわけではなく、ただ自分の信じたもの、進むべき道、居たい場所で過ごすことに決めた結果の別れでした。お互いに考えがあって選んだ選択。だからこそ、別れも悲しいものではなくて、寂しいけれどこの先を明るく迎えられる。

最後に現代のパリで出会った女性と寄り添い歩んでいく姿が印象的でした。自ら選んだ場所で、未来の懐かしい過去になるいつも通りの日常がまた始まって行く。だから最後は淡々と終わっていく。

今だけではなくて、過去も未来も、生きてきた・生きている・生きていく人生の道全部を大切にしようと思えるそんな映画。

ウディ・アレン特有の皮肉っぽい感じは散りばめられてはいるものの、それでも抑えられていてとても一般受けしやすそうな映画です。ウディ・アレン作品はちょっとセリフとかが苦手という人にもこの映画は見てほしいな。
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