Kerry

ミッドナイト・イン・パリのKerryのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)
-
the good old days 古き良き時代へ本当に行ってみた。そこでは…


自身の体験としての「あの頃はよかった」を超えて、史料を通して感じる「あの頃はよかった」。いずれにしても、過去への憧憬は人類普遍の心理なのだろうか。最も、かくいう私こそ、懐古主義の権化のようなものであるので、主人公・ギルの見せるこの物語の片鱗は私と大きく重なった。


誰もが憧れる花の都パリで紡がれる、少し不思議なノスタルジア体験。しかしその体験の先では、自分の思いがいかに独りよがりであったかを思い知らされる。すなわち、結局のところ人間はあらゆる時代を通じてどこまでいっても同じ生き物なのだ。


パリの美しい風景・街並みと、文化・芸術の華々しさを感じつつ、私自身への痛烈な批判でもあったこの映画は、人類普遍の思いを軽やかに描き出した名作。


しかし人間がただ物質的に存在するのみならず、時を経て、時を思い、さまざまな日々を心に刻んでいるからこそ、この世界の時間に占める人間の割合は限りなく大きいのである。その純粋な思いはそっと綿に触れるように大切にしておきたい。


「人間は、まるで歳月のなかに投げこまれた巨人のように、さまざまな時期に同時に触れているのだから、(中略)人間の占める場所はかぎりなく伸び広がっているのだー果てしない『時』のなかに。」
Kerry

Kerry