JUN

ミッドナイト・イン・パリのJUNのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)
3.8
自分が生きることができなかった時代への回帰。
パリで深夜の間だけ叶う、夢のトラベル。偉人と呼ばれる人々との回顧。
雨の似合う美しいパリで起きる、ちょっと不思議な夢物語。

今話題のウディ・アレン作品。
普通のラブロマンスとはすこし違う彼の愛の物語。

ハリウッドでは、彼自身と彼の作品は別物、という考えで今まで来ていたそうでしたが、本当に、不思議な話だなぁと思います。
彼自身は訴えられるような人間であるにもかかわらず、こんなにも素敵な物語を生み出すことができるんですよ。
何も知らないで観たら、この映画を作った人はきっと美しく儚げで不安定でありながらも繊細で夢溢れる人物なのだろうな、と思えるでしょう。

この映画は、すごく不思議な映画ですね。
ただのラブロマンスでもなくて、すごい日本人ぽい軽い感想を述べてしまうと、ジブリっぽいストーリーでした。この感想一番しっくり来てるのですが、わかる方いらっしゃいませんかね…?

「昔」って、すごく魅力的なものですよね。自分が子供の時を思い返して、その眩しさに憧れたり、好きなアーティストの作品をみて、その人が生きた時代や想いに思いを馳せる。いつだって「今」よりも「昔」がよくて、変わって欲しくなかった、今は失われたものに多くの人が価値を感じます。今の人が80'sの映画を懐かしみ、好むように、きっと数十年後の未来では2020年の映画を好む人がいるでしょう。
私は何かとビンテージなものだったり、生きていない時代のものに憧れがちなので、現代を生きていて、過去よりも現在を肯定することができる人をすごく羨ましく思います。

この映画の好きなところは、ただのタイムスリップ物語ではないところ。彼の妄想でもなく、現実に起こってるだと思わされる時代の交差が夢物語を少し現実的なものにしていて好きでした。
あと、この物語が果たして本当に現実のものなのか、はたまた誰かが書いた物語の一部なのか、夢と現実どちらが本当の話なのか、少し考えさせられる点でも良かったです。どっちが本当、というか、「昔」では、「今」が小説の中の話として登場するという、現実の錯綜が魅力的だった、と言いましょうか。

これだけ魅力的なものを作ることができる監督なら、たしかに「作品と人物は別物」と考えられても不思議ではないですよね。
私は好きな作品でした。
JUN

JUN