すず

レインボウのすずのレビュー・感想・評価

レインボウ(1989年製作の映画)
3.0

幼い頃に、アーシュラは虹に向かって走っていた。彼女は空に掛かる虹をつかめると信じていた。

古い固定観念を否定するような(原作の時代背景を鑑みるとかなり前進的な)、自立した、自由奔放な女性像が瑞々しかった。

世のならわしに対して真っ直ぐな疑問を抱き、自らの真実を探し求めている。そこに矛盾すること、自分を偽ることは本当に大嫌い。

それは若さゆえの無知や、強情さや、実直さによるものなのかもしれないが、疑いもせずに、押し付けられた運命をすんなりと受け入れる方がずっと不健全だ。

〝こうあるべきだ〟という世に脈々と流れ続ける観念がある。

そこに違和感を感じるとき、一体どうあるべきなのか?仕事は?愛とは何?性とは?男とは?結婚とは?私とは?

分からないから、追い求めたい。

ときに見失いかけても、アーシュラは幼き日の虹を純真な心でずっと追いかけていくのだろう。いつまでも、そうであって欲しい。エンディングのシーンがとても美しかった。

ケン•ラッセルのかなり正統派な、古典的芸術の趣を放つ作品。原作はD•H•ローレンスの同名小説。

淡々と、温かく、優しく、小綺麗に収められたこの物語はこれで良しとして。

ふんわりと主眼がぼやけているような、当たり障りのないような感覚もあって、原作はどのように描かれているのだろうか?原作に一貫して忠実な映画だったのだろうか?アーシュラはいつか〝虹〟を掴めるのか?など、色々と気になるところではあった。

アーシュラ役のサミ•デイヴィスの健康的な美しさと可愛らしさが素敵だった。
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