スランプに陥った脚本家の苦悩と葛藤を描いた不条理コメディ。
孤高の脚本家チャーリー・カウフマンの世界が遺憾なく発揮されている。
『マルコヴィッチの穴』が成功した脚本家チャーリーという、カウフマン本人と言えるキャラクターを主人公に据えて、脚本家の頭の中を見事に言葉と映像にしている。
ただしっかりしたストーリーがあるとは言えない。
チャーリーが脚本を執筆する現在の物語と、
原作者スーザンがジョンを取材する3年前の物語、
チャーリーの妄想、
そしてこの映画『アダプテーション』の脚本の存在が多層的に重なって進む。
フィクションでありながら、どこかリアルも感じさせる仕掛けが満載になっている。
ハリウッド的な脚本で成功を掴む双子の兄弟の存在なども、カウフマン本人の葛藤と皮肉が込められている気がする。
機知に富んでいるような台詞が随所に見られはするが、それがこの映画のメッセージとも思えない。
1人の惨めな男の姿を通して、悲哀と苦悩、そして諦念と希望の混じった人生への向き合い方を見せる。
ニコラス・ケイジ、クリス・クーパー、メリル・ストリープの演技は素晴らしい。
これを映像化したスパイク・ジョーンズの手腕もすごい。