Daisuke

アダプテーションのDaisukeのレビュー・感想・評価

アダプテーション(2002年製作の映画)
3.9
[物語と自分]

この作品は、スパイク・ジョーンズの作品というより、やはり脚本を書いてるチャーリー・カウフマンという奇人の物語だと思います。(彼の作品は毎回だと思いますが)

一発当たった脚本家が新しい作品を作ろうとして苦悩していく話、というのは良くある話だけれど、チャーリー・カウフマンらしいのは、
その登場人物に自分をまんま設定してしまってる事です。
名前もそのままチャーリー・カウフマンとし、
現実である作品の生みの苦悩をそのまま自虐的に物語へと落とし込んでいいます。

なぜ、そんな事をするのか?
とても変な人だなと思われる方もいると思うけれど、私は「物語を作る」という最も本質的な部分だとも思っています。

憧れや、苦しみ、それらを物語の登場人物たちに分散させる。それこそがリアルな葛藤となり鑑賞者に届くというのが、物語の本質的な部分だと感じているからです。
そういう意味ではチャーリー・カウフマンはとても「素直」な作家なんだと思います。
『脳内ニューヨーク』や最近の『アノマリサ』(傑作だと思ってる)にしても、この作品の描かれていた彼の苦悩は全くそのままで、少しだけ表面上の形を変えて表現しているだけにすぎません。

とても印象的なシーンやセリフもたくさんあります。
たとえば、書いてる本に登場させる花を知るために、原始まで遡り「全ての生命をひとつに束ねるんだ!」「そこから映画がはじまるんだ!」という部分まで到達してしまう。
物語を作る人たちは一度は考えた事がある滑稽な「思考の飛躍」ではないだろうか。
(余談、私の大好きなテレンスマリックはツリー・オブ・ライフでまさにそれを映像化してる気が笑)

次に、この作品でドキリとしたセリフを。

「何かに熱中すると言うことは自分が管理可能なところまで世界を削ることだ」

「なんてやさしくて悲しい見方なんだ。だが真実だ」

本当にすごく好きな部分だったので急いでメモを取りました。

この作品は、植物と人間を対比させ、アダプテーション(適応)する事が人間はとても大変だというのがテーマであり、
チャーリーカウフマン自身の苦しみに自分もリンクしました。

ほんと、

みんなと仲良くしたいのに。
中々踏み込めないなあ。
Daisuke

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