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不良少女モニカのkaomatsuのレビュー・感想・評価

不良少女モニカ(1952年製作の映画)
3.5
ストックホルムの、とある青果店で働く17歳の少女モニカ(ハリエット・アンデルセン)と、陶磁器店の配達業務に就く青年ハリイ(ラーシュ・エクボルイ)との、若さゆえに自暴自棄とも言える愛の逃避行、そしてその顛末を描いた、イングマール・ベルイマン監督の出世作。

モニカはいわゆる擦れっ枯らしで、不良少女のレッテルを貼られている。片やハリイは真面目だが、職場では遅刻や失敗などで要領が悪く、互いに悶々としたものを抱えていた。カフェでの初対面から二人はすぐに意気投合し、映画を観て、映画のシーンそのままの熱いキスを交わす。二人は家族とはウマが合わず、共に家出をする。そして、ハリイの父が所有するモーターボートの中で暮らし始める。その翌朝、ハリイが仕事に遅刻して店をクビになったのをきっかけに、すべての社会的なしがらみから解放された二人は、モーターボートで行く宛のない旅を始める。ほどなくモニカは妊娠し、幸せな結婚生活に憧れ始める。やがて食糧不足から、モニカはある家に盗みを働き、その家の住人に捕らえられてしまう。自力で逃げ出すモニカ。だが、そのときハリイは助けに来てはくれず、二人の愛に翳りが見え始める。二人はストックホルムに戻って結婚し、モニカは女の子を産む。ハリイはいたって真面目に働き始めるのだが、あまりに家庭を顧みないゆえ、モニカは一人で赤ん坊の面倒を見なければならず、孤独な極貧生活にはすでに限界が来ていた。ある日仕事が早く終わったハリイは、モニカの顔を見ようと家路を急ぐが、皮肉にも家の玄関から出てきたのは、モニカの昔の男だった…。

現代なら、ごくありきたりな青春モノである。しかし本作が、戦後10年も経たない頃に製作されていることを鑑みると、ハリエット・アンデルセン扮するモニカの自由奔放な色気は、公開当時はさぞかし鮮烈だったろう。当時、イングマール・ベルイマン監督とお付き合いしていたせいだろうか、ハリエットの魅力が余すところなく発揮されている。さらに、モニカとハリイの関係性を追っていくうちに、最初はあんなに情熱的だった二人の愛も、こうもあっけなく醒めていってしまうのだろうかと、愛の刹那について考えさせられた。若いときは、激しく強く愛し合うことはできても、愛し合ったまま現実生活を営むことがいかに困難であるかを、ベルイマン監督は冷徹に、かつ容赦なく描いているようにも思えてならない。
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