フラワーメイノラカ

アデルの恋の物語のフラワーメイノラカのレビュー・感想・評価

アデルの恋の物語(1975年製作の映画)
4.0
破滅するほどに求めた愛。

ヴィクトル・ユゴーの娘アデルの半生を脚色した、命懸けの恋愛ドラマ。

処女作から一貫して自意識の暴走を撮り続けたトリュフォーが、フランス映画の美しき狂気イザベル・アジャーニの才能を開花させた、記念碑的な作品だ。
そして、運動から離れたトリュフォーが出した、ひとつの結論でもある。

アジャーニ演じるアデルは、叶わぬ恋に必死に追い縋る。
溺れ死ぬ姉の悪夢に苦しめられ、衰弱しても尚、
彼女を駆り立てる狂気。これは、頻繁に手紙のやり取りを行なっていた父親からの影響を体現しているように思う。
ユゴー個人というよりは、革命、自由への激しい渇望ーーロマン主義に大きく支配されている。

国に仕える軍人のアルバートが彼女を拒絶するのは、宿命づけられていたことなのかもしれない。
たった一度、かつて愛し合っていた頃のように抱き合うシーンは、どうしようもなく切ない。