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blueのwtson322のレビュー・感想・評価

blue(2001年製作の映画)
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木製椅子の床を擦る音、少し上がった綺麗な薬指と小指に支えられるマッチ。グラスに入れたカルピスが鳴らす残暑。タバコとイーゼルにそれぞれ向き合う横顔。一房の葡萄の、ふたつの青色。
冒頭、無情にも、遠藤を追いかける桐島の目線とは真逆に、バスは松林越しの日本海を抜けてゆく。ガラス越しの無音の世界の住人だった彼女が、日常に浸食してきた瞬間。つり革にぶら下がるふたりの白くて骨ばった手とくっきりした二重まぶたは、寒々しくも怜悧な海の町に溶け込む。
「なんかよくわかんない」未来を見据えながらあんバターを食む少女たち。「桐島と遠藤が抜けたらうまく割れないんだよ」、彼女のことばは、制服の同質性、お弁当の神格性、歩調を揃えることで平坦な痛みを共有する彼らを代弁する。
だからこそ、商店街では足並みを揃えなかった桐島が、遠藤とはハンバーガーを並んで食べるのだ。
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