魚喃キリコのモノクロでシンプルな視線が凄く好きなのだけど、映画がそこに刷毛でぱっと青色を落としていって、消えずに残った、そんな感じ。
観た当初は小西真奈美に目がいったけど、今なら市川実日子の稀有な才能の片鱗が垣間見える作品だと感じる。キリシマがエンドウに向けるひたむきさは、結構偏差値の高い田舎の女子高の自由と閉鎖の隙間から覗くエンドウの自尊心にも似てる。
見た目原作のエンドウに似てない小西真奈美は、さすが中性的なアンニュイさと背負う孤独感がエンドウを表し、原作よりかいささか少女感の強い市川実日子が唐突にホースの水をかぶるシーンで、いつしかキリシマと化していたのがとても印象的。
でも何といっても真夏の新潟ブルーが美しすぎる。炎天下、延々と続く海岸線のコンクリの堤防で二人がキスするシーンはまるで小説のようで、溜め息しか出てこない。
もう二度と帰れないあの風景は、二度と会えない大切な誰かとの共通の思い出。
まるで自分が同じその場所にいて息をしてたみたい。ずっと忘れられない、大好きな作品。