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blueのallyのレビュー・感想・評価

blue(2001年製作の映画)
3.2
好きな人の好きなものが、自分の中に取り込まれていく感覚。





10代。特に学生生活では、誰々は誰々と仲がいい、あの子が好き、勉強だ、家族だ、友情だ、恋愛だ、処女だ、童貞だ、だの。息苦しい世界で生きなければならない。
(社会に出てももしかしたら大差無いのかもしれないけれど)



泣いているところに唯一、声をかけてくれた。出会った時から自分より遥かに大人びて見えた遠藤。
洋楽のCDが沢山積まれていて芸術的な絵があって画集が並ぶ部屋。そこで綺麗に火を付けてタバコを吸う彼女がいて。
凄く魅力的に見えたんだ。
大人な彼女に少しでも近づきたかった。自分も大人になりたかった。
だから、飲み会で正面に座っていた彼女と同じようにタバコを吸うあいつと寝た。
彼女になってみたかった。





高校生は、大人とも子供とも分別しにくい。成人済みの大人から見たら子供だと言われるが、小学生から見たら大人だ。
大人の元から逃げ出したい。
親のことが憎いほど嫌いなわけじゃないけれど、迷惑かけて、散々お世話になってることはわかっているけれど、そのお世話から解放されたい。自立したい。
家に帰りたくない、けれどどこに行けば良いかもわからない。居場所が分からなくなる。
そんな中で見つけた避難場所。大事なテリトリーを教えてくれた。
でも、大事な話は教えてくれなかった。
なんとなく理由は分かっていても、直接本人には聞けなかった。
あの男、あいつにハッキリ言われてショックを受けた。正論を、聞きたくなかった答えを明確に伝えられてしまうと、受け入れ難くて、でも、それが本当なんだ。




今いる場所からずっと遠くへ、どこでも良い。連れ出してくれるなら連れ出して欲しかった。ここから離れて知らない土地へ行きたい。だけど、自分には何もない。
何も無い、なんの取り柄もない状態で出ていくのが危険だということは分かっている。
子供を堕ろして、スッキリしてモヤモヤして虚しくなった。
相手の趣味を取り入れるだけ取り入れて。
音楽も、タバコも、何もかも、「知ってる」だけ。
「画集を見ても、描こうとはしなかった」
大抵の人はそうだと思う。見て、感じ取って、終わり。自分にできるものじゃないって諦める。




けれど桐島は違った。


好きな遠藤から借りた画集を参考に、静物画を描き始めて、自分のものにしていった。進路も決めていった。

そんな桐島に少し、憧れた。




結局、ひとり地元に残ってしまった。
ただ、勇気を貰えた。
少しでも、取り柄を持とう。自分にしかできない何かを。誰かの為にできる何かを。
それがきっと、自分の自信にも繋がるから。
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