イチロヲ

ブルーベルベットのイチロヲのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
4.5
故郷の田舎町に帰省した青年(カイル・マクラクラン)が、茂みの中から片耳を拾ったことを契機にして、闇社会へと陥れられてしまう。非日常の世界に取り込まれる恐怖を描いている、巻き込まれ型のサスペンス映画。

デヴィッド・リンチ作品に一貫しているのは、人間の目に見える世界の裏側に潜む、「見えない世界(=厭な世界)」を描くということ。鑑賞後に、厭なものを見せられたと憤慨する人がいれば、気づかないところに気づかせてくれたと絶賛する人もいる。

演出面では、定点カメラによる「覗き」のシチュエーションが印象鮮烈。とりわけ、痴女に襲われてから、デニス・ホッパーのHENTAIぶりを覗き見るまでの、一連の流れが絶品そのもの(変なセリフ回しを日本語字幕で表現できないのが心惜しい)。

主人公が巻き込まれる事件の背後に、サドマゾ心理が潜んでいるという展開は、江戸川乱歩「D坂の殺人事件」を想起させるものがある。情欲に惑わされた主人公が、非日常的な世界に刺激を求めていくあたりも、極めて乱歩的といえる。
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