タケオ

ブルーベルベットのタケオのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
4.5
デヴィッド•リンチ監督の作品は、色々と尺度が狂っているが故に元から鑑賞者を置いてけぼりにしやすい性質を持っている。世界的ベストセラー小説の映画化作品『デューン/砂の惑星』(84年)が興行的に失敗したのも、ある意味当然の結果だといえるだろう。この失敗にショックを受けたリンチは、『デューン~』のプロデューサーであったディノ•デ•ラウレンティスの力を借りながら自分の原点に立ち返ることを決意。そうして制作されたのが、本作『ブルーベルベット』(86年)である。ある事件をキッカケに主人公がファムファタールと出会い、次第に街に潜む闇に巻き込まれていくという物語自体は正に古典的なフィルム•ノワールそのもの。だが、リンチはそんな物語を変態的かつ悪夢的なアート性で染め上げることで、超現実的ともいえる「Theリンチ映画」として見事に成立させてみせた。のどかな田舎の闇に渦巻くセックスと暴力、全編から匂い立つ背徳感にはゾクゾクとさせられる。露骨なほどのメタファーや、狂気を超えて最早ギャグの領域にまで突入してしまったデニス•ホッパーの暴走演技も堪らない。デヴィッド•リンチの入門編としては、最適の1本ではないだろうか。
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