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ベリッシマのろのレビュー・感想・評価

ベリッシマ(1951年製作の映画)
4.3
「娘を有名にして幸せにさせたい。それが親の役目でしょ。それが罪だというの?」

めちゃくちゃ面白いヴィスコンティのコメディ。
娘を映画出演させたいお母さんの奮闘劇を描いています。
そのお母さんが強烈なんですよ。イタリアの熱血ママって感じ。
彼女のキャラクターに古くささはなくて、「今もいるよね、こういう人!」って思っちゃう。子どもに自分の夢を背負わせて、引きずりまわす。その滑稽さがリアルに描かれています。

〈あらすじ〉
映画会社のオーディションで6~8歳の少女を募集。
そこへやってきたマッダレーナと娘マリア。
マッダレーナはなんとか娘を合格させようと、あの手この手を使う。

合格するために踊りが必要だと聞けば、バレエを習わせる。
新しいお洋服を購入したり、演技指導の先生を付けたり。
さらに、映画スタジオの若者に賄賂まで…!?

毎晩遅くまで娘を連れまわす妻に旦那がキレる。
仕立て屋さんがやって来て、演技指導の先生がやって来て。夫婦げんかになって。
マッダレーナもご近所さんも旦那さんも、まぁ怒鳴る怒鳴る。血管切れそうな勢いで、唾の飛ばし合いをしています。
「娘のためなのよ。私のような苦労をかけさせたくないの」
このてんやわんやな雰囲気に思わず笑ってしまいます。

オーディションの様子を撮影したフィルムを見せてもらうために、スタジオを訪れる場面。
そこで一人の女性に出会います。
彼女は女優を志していた。けれど、その夢に破れた過去を持っていました。そんな彼女が言います。
「本気で俳優になるつもりなら、よほどの覚悟が必要よ。奥さんの夢を壊すつもりはないけれど、失敗してきた人たちを大勢見てきたので。私だってチヤホヤされて、挙句の果てがこの通り。お払い箱よ」
それを聞いて、「思い通りにはならないのね…」と不安げに娘の顔をなでるマッダレーナ。夢を見ていた彼女がハッとさせられた瞬間でした。

そしてオーディション映像を見ていた監督たちの反応を見て、マッダレーナは現実を目の当たりにします。
娘は万人にとって特別な存在である必要はない。私にとって大切な娘なのだから。そのことに気付いたマッダレーナは…。

オーディションを通して親子の絆は深まります。
娘マリアは安心して眠りにつくのでした。

「娘のためなら、どんな苦労も平気よ」
ろ