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アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶のyamakawa3000のレビュー・感想・評価

3.6
アンリ・カルティエ=ブレッソン。
20世紀最大の写真家と言われます。
今作は、2004年に95歳で他界した
彼が最後に自らを語った非常に貴重な
ドキュメントフィルムです。

彼は小型カメラの『ライカ』を抱え、
自らの眼で世界中をスナップしました。

彼の写真は『決定的瞬間』という言葉で有名です。
それは、衝撃的な事件や事故ではなく、
自然の中にあふれる、その時しか起こり得無い
完璧な構図を一瞬の内に捉える事。

この偉大な写真家の影響を受けた写真家は
何百万人といる事でしょう。
本編の中で、Elliott Erwitt(写真家)が
ブレッソンの写真をみてこう言います。
『どんなに優れた技術を持っていても写真家には
 なれない。優れた視る眼を持っているかだ。』

一瞬を捉えたその写真には自然が与えた
多くのメッセージが散りばめられていて、
写真を視る者は思い思いに読み取ります。

僕は写真家では無いですが、
初めてブレッソンの写真を観た瞬間から、
自分でも写真を撮りたくなり、
今でも趣味の一つとして撮っています。
もちろん写真集も買いました。

この偉大な写真家は、なかなかの頑固者で知られ、
自ら被写体となる事を嫌い、本人の写真や映像は
ほとんどなく、自分の写真を自ら語る映像なども、
数えるほどもありません。

しかし、今作では93歳を迎えたブレッソン本人が、
一枚一枚自分の写真を取り上げ、
何とも嬉しそうな顔をして当時の思い出を語ります。
ブレッソンの写真を愛する人々にとって、
本人がその時どう感じ、どう撮ったのかを語る姿は、
彼の写真の新たな魅力を知るきっかけになるでしょう。
そして、瞬間を捉える時の音を『シュッ』とか
『バーン』とか音を出して表現している時の
子供の様な無邪気な笑顔がとても印象的でした。

1908年に生まれ、2004年にこの世を去った
まさに20世紀とともに生きた写真家ブレッソン。
僕が言うまでもなく、本当に素晴らしい写真です。

日常を奇跡の様に切り取った写真の数々に触れて、
その魅力に取り憑かれたアーティスト達の声を聞き、
世界の見方を一つ増やしてみるのもいいのでは
ないでしょうか。
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