てつこてつ

ブエノスアイレスのてつこてつのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
3.5
第50回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。確か、日本の単館上映の最多観客動員記録をいまだ保持しているはず・・。

ウォン・カーウァイ監督が描いた男同士の愛憎劇。昨今、大量生産されているBL映画という分野とは明らかに違う世界観。エンディングの台湾を除いてほぼタイトル通りにブエノスアイレスで撮影しているだけあって、監督ならではの映像美は見応え十分。カサ・ロサーダ(大統領官邸)のような観光名所が登場する訳でもなく、どこにでもあるような薄汚い路地でさえもライティングや、背景の差し色として鮮やかな看板を映り込ませるなど、どのシーンを切り取っても美しい。主人公の恋人たちが同居するボロアパートでさえ、内装がとっても南米らしい鮮やかさで素晴らしい。

但し、序盤のモノクローム撮影は、ちと余分。そして、トニー・レオン、レスリー・チャンという香港映画界の大スター共演であったにも関わらず、二人の相性の悪さが作品からもハッキリと伝わってくるほどで、とても恋人同士とは見えないのが残念。レスリー・チャン演じるヒモのようなキャラクターの深掘りが出来ておらず、どうしてそこまでトニー・レオンが彼に尽くすのか??が理解しがたい。

撮影裏話として、何かの記事で読んだが、当時、歌手活動もしていたレスリー・チャンのコンサートの関係で彼のブエノスアイレス入りが相当遅れて、トニー・レオンが大いに憤慨していたとか・・。何か、その険悪なムードがそのまま作中でも露出してしまった感。トニー・レオンの無造作な短髪にリングピアスってのも、あまり似合っていないね。

ほぼこの二人が中心のドラマ展開の中、チャン・チェンだけは一服の清涼剤的や役回りでエンディングに向けても救いがあったかな。
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