くろねこヤマ子

ブエノスアイレスのくろねこヤマ子のレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
3.9
熟れた桃のような男と、
その桃の甘い香りに
後ろ髪たっぷり。

引かれながらも
光を見つけ、
かの地を発つ男の話。

スッと降ってきた
清涼剤のようなチャンくんが
クーリンチェ少年殺人事件の
彼だと知ってから観ると
何故だかニヤっとなる。

20年ぶりの再見。
とか書くと切ない。

この作品をきっかけに
ウォン・カーウァイ監督から
遠ざかったという思い出。
もうこれで全てを見せて貰ったと
あの時思ったように、
今回も胸というか
肺がいっぱいになったというか。

男性の監督が
女ゴコロをいかに上手く捉えているか
たまに気になることがあるのだけれど

その逆。

ここまで男ゴコロを
鮮度高く見せつけられると、
ゴリゴリとその想いを
ねじ込まれるよう。

撮り方故か、撮った時の状況故か、
とにかく迫る勢いがあるというか。

黒を帯びた赤。
くすんだ黄色。
歪んだ画。
監督特有の迫りくる彩色。

トニー・レオンもだけれど、
レスリーチャンは素晴らしいなぁ。
身体を擦りよせ踊る姿に
蝶衣の色香を思ったり。