Jeffrey

誓いの休暇のJeffreyのレビュー・感想・評価

誓いの休暇(1959年製作の映画)
4.5
「誓いの休暇」

〜最初に一言、雪解け後のソ連映画の最高傑作の1本で、これほどまでにソビエトのヒロイズムに満ちた作風もなく、民間人にフォーカスしながら、19歳の兵士のロードムービーを暖かく、ときには冷たくエモーショナルに描いた名画だ〜

本作は1960年キネマ旬報外国映画ベストテン第10位を獲得したワレンチン・エジョフが脚本を務めグリゴーリ・チュフライが監督兼共同脚本した1959年のソビエト映画の傑作で、この度国内初BD化され久方ぶりに鑑賞したが素晴らしい。本作はカンヌをはじめ様々な映画祭で賞と絶賛をうけたもので、モスフィル製作の中でも最も有名なのではないだろうか…。確か監督は処女作だったかの作品がカンヌ映画祭で受賞した折に本作の構想を思いついたと語っていた様な気がした。とりわけ世界中で絶賛された、ソ連「雪解け」期の傑作で、これほどまでにソビエトのヒロイズムに満ちた作風も中々無く、ファシズムを倒したソ連の兵士を含む国がどれほどのものだったかを描いた作品で、このヒロイズムもウクライナ侵攻によって見事に崩壊したこの滑稽さがまた凄いのである。

さて、物語は戦場で思わぬ手柄を立てた若い兵士アリョーシャは、数日間の特別休暇を取り、母の待つ遠方の故郷へ帰ろうとする。帰郷の道すがら、彼は様々な人々に出会うが、困っている人がいると助けずにはいられない。貴重な休暇は瞬く間に過ぎていく…と簡単に説明するとこんな感じで、カンヌ、サンフランシスコ、ロンドン、テヘラン、ミラノなど世界中の映画祭で絶賛され、観客を深い感動に包み込んだ傑作。善良な若者の行動の内に、静かに反戦の主題が浮かび上がる88分である。この映画のすばらしいところは、冒頭とクライマックスがきちんとつながるところである。あの細い一本道に息子を待つ母親のフラッシュバックがなされつつ、母子で育ってきた19歳の兵士に対して、軍のお偉いさんが1日だけだったはずの休暇を6日間に引き伸ばして上げる場面はまさに彼の父親代わり的存在を映し出した瞬間だっただろう。

決して祖国のために戦ったとまでは言えない19歳の彼が、ドイツ軍に怯えて逃げようとしたが逃げきれず、目の前にあったライフルを使って敵の戦車をやっつけたと言うことにより、一躍英雄へと上り詰める。栄光のある勲章を渡すと言うのも断り、そのかわり母親に会いたい、そして家の屋根を修理したいと言う目的で彼は6日間の短い休暇を取りに行く。そこで彼が様々な人物と出会って、石鹸を妻に渡してほしいと頼まれて、家まで行くのだが、その妻は〇〇と〇〇をしており、19歳の兵士は嫌な顔をする。その後にも様々な展開が繰り広げられ、列車の乗り継ぎに失敗してしまった彼はトラックを運転する老婆の車に乗って、なんとか出会ったばかりの女性と再会することになる。そしてようやく母親の元へ、自分の故郷の村にたどり着くも、道中様々な人々を助けてしまった分、休暇の時間が少なくなり、目的の屋根修理を果たせないまま彼は戦地へと戻っていってしまう。ここがものすごく辛いところである。皮肉にも監督はウクライナ生まれである。今のウクライナ侵攻の中、こういったソ連映画が発売されるのもまた何とも言えない気持ちになる。だが、ソ連時代の作品は多くの傑作があるためファンにとっては発売は嬉しいことだ。
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