minorufuku

ヘヴンズ ストーリーのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

ヘヴンズ ストーリー(2010年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ヒロインが8歳の時に、彼女の両親と姉は殺人犯に襲われ死亡。犯人は遺書を残して自殺した。途方にくれるヒロインはある日テレビの報道で、妻と娘を殺された青年の存在を知る。妻子を殺した未成年の犯人は無期懲役に。青年は記者会見で「法律で裁けないなら、犯人は僕が殺します」と涙ながらに宣言する。そんな青年をヒロインは英雄視し、生きる希望とするのだが…という話。

全9章からなる上映4時間半の大作。8年前の作品だが最近DVD化されたので鑑賞。他の作品借りた時に予告編を見て以来絶対観たいと思っていた。

とにかく設定の救いようのなさとメッセージ性が際立っている作品。
2つの事件(正確には3つ?)の被害者遺族と殺人犯、そして彼らを取り巻く人々の事件後の数年を描いている。上述している2人の主人公だけでなく、登場人物の背負っている過去や境遇が凄まじい。宣伝では憎悪や悲しみに包まれた映画のような印象を受けたが、中盤は憎しみによる苦悩と葛藤を描きつつも愛情の物語になっているように感じた。
特に仮釈放後の殺人犯と彼の心の拠り所となった若年性アルツハイマーの中年女性との生活は悲しくも優しいストーリーで涙を誘う。事件とは直接関係のない元警官で復讐代行屋の男とその息子のエピソードも味があってよかった。この元警官の過去も凄まじいけど。
終盤は復讐パートなのだが、その辺りからダラダラと冗長になってくる。アクションの撮り方がイマイチでやたらと長い追いかけっこが間抜けに見えてしまう。それにそもそもこのお話、結果的には被害者の青年も再婚したり殺人犯も生きがいを見つけてそれなりに幸せな生活を送ってきたところをヒロインが粉々に壊してしまうわけで、中盤の心温まるエピソードに共感していた身からするとすごくモヤモヤする。あと、幾ら何でも4時間は長い。2時間くらいで収まった話だと思う。
といっても、見応えと凝縮した人間ドラマはなかなか他にはない鑑賞体験だったので、観て良かったと思った。

殺人犯役の忍成修吾が好演していた。「リリイシュシュの全て」の時のいじめっ子のような他者を寄せ付けない空気と優しさとギャップが魅力的だった。ヒロインは「地球でたった2人」という映画で非常に可哀想な境遇の役で主演していたが、本作でも幸薄い役柄でハマリ役だった。この映画出番の少ない脇役で大物や渋い俳優が多く出演している。佐藤浩市、柄本明、嶋田久作、吹越満、光石研など。豪華だなあ。

DVDは上下巻に分かれているのだが、それに気づかず借りて上巻のラストでその事実を知り、続きが気になって徒歩30分のTSUTAYAに下巻借りにいったら全て貸出中で、待たされた1週間は上映時間以上に長く感じた^_^
minorufuku

minorufuku