Inagaquilala

人間に賭けるなのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

人間に賭けるな(1964年製作の映画)
4.1
競輪を扱った作品としては、おそらく最高傑作の部類に入るのではないだろうか。同じ原作者(寺内大吉)のもので、「競輪上人行状記」という作品もあるが、こちらのほうが競輪という競技の本質を物語づくりにも生かしているという点で、優れているように思える。

タイトルがそのまま物語の趣旨とも重なるのだが、この競技に憑かれた男女の奇妙な連帯感と機微が密度濃く描き出されている。監督の前田満州夫はあまり作品を残していないようだが、冒頭の土手の上に止まるタクシーのシーンなど、かなり斬新なショットを撮る人間のようだ。

ややヌーベルバーグ的な味わいなどもあり、モダンな感覚を持った監督のようで、作品的にもなかなか見応えがある。妙な外国人になる前の藤村有弘が二枚目役の主人公を演じていて、これも見どころのひとつかもしれない。渡辺美佐子が演じる競輪選手に入れあげるヤクザの親分の妻もいい。ともかくドラマとしても見事に成立していて、素晴らしい作品であることにかわりない。
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