ヨウ

隠された記憶のヨウのレビュー・感想・評価

隠された記憶(2005年製作の映画)
3.9
最後まで謎が払拭されない難解物だとは予想外。裕福な家庭に送られる盗撮テープと奇怪な絵葉書。当たり前の暮らしを侵食され狂ってゆく面々。思い起こされる忌々しい過去と浮き彫りになる犯人像。晴れぬ疑い。常軌を逸した「潔白の証明」。身体中を覆い尽くす悪寒と衝撃展開の数々に只々絶句。誰の胸にも眠る罪意識と疚しさを有無を言わせず引き摺り下ろすミヒャエルハネケの奇術に惨殺されるような心地がした。結局真相はどうであったのか。そんなことはどうでもよい。決して他人事ではない人間の業を思い知れ。観客に挑みかかるようなメッセージが強烈に刻まれる。正直私は驚愕のラストカットと言われるものをみても全然その実態に気づいてなかったし、後でウィキで調べて「なるほどな」とは思ったものの、どうもこの事件の全貌を解明することは到底無理だろうし、丁寧に掘り下げる気力すら起きない。千差万別の解釈が許されているのだから分からないならそのままで、初見時の自分の考えを大事に身を引くのが最善かと思われる。ハネケが明るみにした闇の様相を心の片隅にでも置いておけばそれでいい。私は今作とこのように付き合ってゆこうと考えている。総じて何とも形容し難い体験であった。
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