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隠された記憶のmasayaanのレビュー・感想・評価

隠された記憶(2005年製作の映画)
4.0
洗練されたメタフィクション。各ショットが異なる時制と位相を流れるなか、それが一連の持続として通り過ぎていく画面を見つめながら、われわれは何パターンの視線を同時に浴びせる(あるいは、浴びせられる)必要があるのだろう。

そうしたメタフィクション的な複雑さを楽しみつつ、一方では、「ある日、上流階級の核家族の家庭に、一家の様子を監視撮影しているビデオが奇妙なイラストとともに送られてきて・・・」などといういかにも客引き的な「設定」を仕込みつつ、実際に集まった人に見せるのは、平たく言えば人びとの「とっさに出てしまった本音」である。その「設定」が暴き立てるのは、取り繕ってきた家族の不和であったり、人種に対する拭い難い差別意識であったり、あるいは、未だ裁きを受けていない、少年時代に犯した罪の記憶である。

あらゆる点でストイックな映画だが、ジャンプ・カットで繋げられる二度の競泳シーンが視覚的な「息継ぎ」となっており、シリアス一辺倒にはなっていない。何をも断罪しない語り手の好い加減な無責任さも、映画としてはむしろプラスでありましょう。
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