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三里塚 岩山に鉄塔が出来たのshishiraizouのレビュー・感想・評価

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〈三里塚〉シリーズ第5作。
この次の『三里塚 辺田部落』が〈三里塚〉シリーズと〈牧野村〉モノの架け橋となるようなある種の集大成だとして、『鉄塔』はその直前、“闘争時代”の最期の映画ということになります
単純に“撮って出し”したような活動報告の如き、勢いの良さ、高揚があります。主なシークエンスは3つだけ

1971年9月、第二次強制代執行により、青年行動隊団結小屋が破壊される。その中に籠る面々にカメラが向けられる
滑走路の端に鉄塔を建設し、飛行機の離着陸を阻止する計画。法に違反してまでこれを進めるか、中止するか。弁護士もまじえての反対同盟のディスカッションが20分にも及ぶ。ここまでほぼ会話劇で進行
そして、鉄塔建設のパートが1時間あり、大部分を占める。人々が手足と知恵でひたすら高みを目指す、シンプルな愉しさ
雨。支援の鳶職の人々が4段目まで完成した鉄塔を見上げながら戦略を練る。これ以上はクレーンでは積みあげることか出来ない。丸っこくてグラサンの棟梁の指示で、ボーズの丸太を皆で運ぶ、原始的な動作からスタートするが、彼の計画は頓挫する
すると棟梁よりエラいらしい、細身の総棟梁があらわれ、切れ者ぽくパッパと指示出しをはじめる。頂点に使う予定のポールを上までずりあげて、それをクレーン代わりにつかおうというアイデアだ。ポールを利用してウインチで高くあげた一本300キロある鉄骨を、上部に継ぎ足し、つないでゆく。土地を開墾するかのような物質的アクション
鉄塔を下から天辺まで、登ってゆく鳶を、カメラは魅入られたようにひたすら追うワンカット。地面から鉄製のものが確かに芽生えて皆で育てたという、手触りが感覚されます
やがて積み上がった7段目、そこからの俯瞰画面。田畑がひろがり、所々に丘陵がうねっている。その光景、『ニッポン国 古屋敷村』の、ジオラマで地形を作って冷気の流れる実験をするシーンを想起、あるいは予告する

こうして60.5mもの高さの鉄塔が完成した。テロップ〈公団が飛ばした検査機 /塔のためー上空を飛ぶことができない〉
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