健一

暗殺の森の健一のレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
3.0
イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の1970年の作品。
ほぼ同時期に撮った「暗殺のオペラ」はすんなり受け入れられたのだが、本作はかなり難解。
ヘタに手を出すとヤケドするタイプの作品なのかも?
原作のタイトルは「孤独な青年」。
原題の意味は「同調者」。
なのに邦題は「暗殺の森」。
ちょっと 安易。
なんでも日本で初めてロードショー公開されたベルトルッチ作品が本作だそうで。
当時 劇場で観た方はみんなハテナマークばかりだったのでは?
ベルトルッチ作品のミューズ、ドミニク・サンダが当時の日本で人気を博した作品も本作。

第二次世界大戦前のイタリア🇮🇹。
哲学の講師マルチェロは 少年の頃彼を犯そうとした使用人の男を射殺してしまった罪悪感に今もなお悩まされる日々を送っていた。
その苦しみから逃れるためファシズムになる事を選んだ彼にパリ亡命中の恩師である教授を調査する密命がくだる。
新婚旅行を口実にパリに着いたマルチェロと新妻は教授に迎え入れられ親交を深めていく・・・

かなりディープでマニアックな心理描写が続く。
巨匠とは言えベルトルッチ監督も当時は まだ29歳!
この若さでこのレベルの作品を世に送り出すとは尊敬に値する。
儚くも美しい青年の悲劇が心情と重なり 残酷な世界を彩る。
幼い頃にトラウマを抱えたまま大人になってしまった悲しみ、どうしようもなさを見事に表現していて素晴らしい。
悪に徹しきれない秘密警察、今でも愛してる人の妻、今愛すべき新妻、盲目の友人との交流、我が恩師への任務。
ひたすら意味不明なまま 突き進む。
そして 辿り着く 暗殺の森・・・
人生と一緒で答えがミツカラナイまま映画は終わる。
エンドクレジット中、深い余韻だけが包み込む。

この難解なストーリーを支えているのが ヴィットリオ・ストラーロが映し出す脅威の映像美。
彼が監督をちゃんと影で支えているので 本作はここまで完成度高い作品に仕上がっていると感じる。

ちょっと万人にはお勧めできないが、ベルトルッチファンは必見。

どちらかといえば 本作よりコーエン兄弟が撮った「ミラーズ・クロッシング」のほうが
暗殺の森 っぽい。



TSUTAYA JR板橋駅前店にてレンタル
😷コロナパンデミック中に鑑賞😷
健一

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