emily

オフサイド・ガールズのemilyのレビュー・感想・評価

オフサイド・ガールズ(2006年製作の映画)
4.0
女性のサッカー観戦が禁止されているイランを舞台に(今は女性席を設けるなどの対策が考えられているみたいですが)、なんとかワールドカップ出場をかけた試合をみたいと男装をし、なんとか検問を潜り抜けようとする少女たち。検問で引っかかってしまい、スタジアム内で勾留され、そこから分隊へ車で移動することとなる。

イランの女性差別問題を真っ向からドキュメンタリータッチにコメディ要素をふんだんに取り入れながら、素朴で的確な疑問へ切り込む。
「なぜ女は男と一緒にスタジアムでサッカー観戦できないのか?」

男装して見繕っても、体の線の細さやボディチェックもあるのですぐにばれてしまう。それでもなんとかすり抜けて観戦している人もいるのだ。今作では検問に引っかかって勾留されてしまった6人の女性たちと彼女たちを見守る警備員たちの物語である。女性は聞く「なぜ男と一緒に観戦できないのか?映画館では一緒に並んでみてるのに?映画館のほうが暗いのに?」その問いに明確な説得力のある答えは返ってこない。警備員の彼らだって仕事だからやってるだけで、生活がかかっているのだ。そんな絶妙な距離感が徐々に近づいたり、人として男女を超えたやさしさを見せるのだ。

彼女たちにサッカーを見せたくない訳ではない。ただそれが仕事だから、言われるままに彼らは仕事をしているだけである。試合は始まる。歓声のみが彼女たちに響きわたる。途中から警備員が実況をしてくれ、その言葉だけで興奮するのだ。それなら家でテレビで見ればそれでよかったのではないか?という疑問が生まれるが、熱狂的なサッカー好きなら、生で、その場の空気の中で観戦したいと思うのが当然であろう。実際に試合が行われてるスタジアム内で撮影されたそうで、試合の熱狂や熱い空気感は彼女たち越しに伝染してくる。

分隊へ連れていかれる車の中で、軍服を着てるから罪が重いと泣き出す女性も居すが、やっぱりワールドカップに出れるかどうかの瀬戸際になると全員の心が一致する。警備員も男女も超えて、一体になり、その瞬間を町全体で祝福する。女性たちが真摯に問い、そうして行動を起こすことでしか現状は変わっていかない。

彼女たちみたいにおかしいと思ったことを、行動で言葉で示していくことが未来を切り開いていくのだ。シンプルな問いかけは説得力があり、コミカルな中に男女を超えた人間の優しさも十分に見ることできる。そうしてその境界線は試合後に盛り上がって見せたように、自然になくなっていくはずだ。
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