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カンバセーション…盗聴…のpsychocandyのレビュー・感想・評価

カンバセーション…盗聴…(1973年製作の映画)
4.1
「ゴッド・ファーザー」や「地獄の黙示録」を撮った巨匠フランシス・フォード・コッポラ。その2作(1つはシリーズ)があまりに有名なため、それらの作品と同じ時期に手掛けられた作品でありながらも、どちらかというと影の薄い印象がある本作。映画史上 不朽の名作として名高い「ゴッド・ファーザー」は別格としても、若き日のコッポラ監督の野心作である本作はもっと評価されるべき作品だと思います。

まず、冒頭の導入が素晴らしい。
サンフランシスコのユニオンスクエアを上空から鳥瞰撮影しながら、徐々に舞台となる盗聴現場の様子が明らかにされていきます。観ている側は、最初何気なく眺めていた広場での穏やかな光景が、どうやらプロフェッショナル集団による盗聴現場であることに気付かされ、いつの間にやら、ノイズ交じりの意味深な会話に耳を傍立てながら、物語に引き込まれていきます。芸術的ですらあるこの冒頭シーンをはじめ、後半以降の、現実と妄想の狭間を彷徨うようなオカルト的な心理描写の見せ方、リアリズム崩壊寸前までメッセージ性を打ち出したシュールなラストシーンなど、若きコッポラ監督が、自らの野心に忠実に、撮りたいように自由に撮っている感じがして、そこが「ゴッド・ファーザー」とは違った魅力を放っている気がします。

名優ジーン・ハックマン(!)の素晴らしい演技にも舌を巻きます。「フレンチ・コネクション」や「スケアクロウ」の役どころとは打って変わって、都会の孤独な主人公が焦燥感の中パラノイアに憑りつかれていく姿を、抑制的でありながら臨場感たっぷりに演じています。その他、コルレオーネ・ファミリーのジョン・カザールやロバート・デュバルをはじめ、若き日のハリソン・フォードも出演するなど、脇を固める布陣も鉄壁です。

1974年のアカデミー賞の作品賞に「ゴッド・ファーザーⅡ」とダブルでノミネートされているところからも、当時のコッポラ監督の溢れ出す才能と創作意欲がとんでもない状態にあったことがよくわかります。

1974年 カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。
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