チッコーネ

リスボン特急のチッコーネのレビュー・感想・評価

リスボン特急(1972年製作の映画)
3.5
監督のカラー作品の中ではランニングタイムが短い。
何某かの制約があったのかな?と思ってしまうほど、登場人物の関係描写がおざなりだ。
その代わり中盤の特急内強奪場面に時間をかけ、鮮やかな犯行の手口を丁寧に描写している。
それが監督の一番撮りたかったことなのか、はたまた商業的なセールスポイントと判断されたのか。
しかし特急とヘリコプターの位置関係を示すチープなミニチュア撮影は、低予算を無残に露呈している。

分刻みの激務に追われながらも、どこか夢想的なアラン・ドロンは非常に魅力的。
彼が唯一激高するのは、女装スパイを恫喝する場面だが、それ以前にふたりの出逢いとなる導入がありながら、調教部分はごっそり抜けている。
また魅力ではドロンに勝るとも劣らぬ米俳優リチャード・グレンナと、ドヌーヴとの間に形成された三角関係描写も曖昧、もっと際立たせる価値は充分にあったと思う。
しかし冒頭、カラフルな外観ながらひとけが全くないリゾートマンションを背景に、車を追いつつゆっくり横移動していく撮影は流麗。
続く銀行強盗場面の編集は機械的で、冷たい緊張感を醸成する。
その周囲を夕暮れ時の豪雨が取り巻くという設定には、非凡な叙情があった。

エンディング・テーマはアズナブール作/イザベル・オーブレ歌唱と豪華だが、メロディはいまひとつ印象に残らなかった…、でも探してみようかしらん。