YasuyukiMuro

流れるのYasuyukiMuroのレビュー・感想・評価

流れる(1956年製作の映画)
4.1
成瀬巳喜男監督、1956年の作品。東京下町(柳橋)の置屋を舞台に、傾きかけた花柳界に生きる女たちの悲喜こもごもを女中目線から描く。元祖家政婦は見た⁈

住込の女中(名前は梨花なのに言いづらいという理不尽な理由で「お春さん」に変えられる!)を演じるのは田中絹代。これがまた出来た女中さんで、周りのちょっとした表情の変化、動き、会話をくみ取り常に先回りでささっと動く。普段は決して前に出ないのにイチャモンつける輩には真っ先に「私が、、」と神対応、さらに注射を嫌がる子供を抱き抱え大人しくさせる包容力はまさにマザーテレサ級という、ウルトラスーパーな女中、凄いです。

一方で置屋の面々は、、借金で首が回らなくなりつつあるけど気丈で艶っぽい女将(山本五十鈴=必殺仕事人の人か!)、常にダルそうな妹の中北千枝子。女将の娘だけど芸は嫌で将来を憂う高峰秀子。そして雇われ芸妓の岡田茉莉子や杉村春子はいたって呑気に噂話に花を咲かす。

お座敷シーンは一切なく、置屋の下世話な日常を淡々と見せられるので中盤までかなり退屈だけど、お金と男がらみで女たちがざわつき始めてからのラストシーン、音と映像が融合する見事さよ!移りゆく時代の儚さ、花街の裏側にある悲哀や女の生きざま、、、そんなこんなが押し寄せて来て、全く知らない時代の全く知らない世界なのにしみじみ来ちゃう、成瀬マジックを堪能出来ます^_^

初めて見た田中絹代の上品さと、サブキャラでありながら杉村春子の演技の幅広さは別格!!
YasuyukiMuro

YasuyukiMuro