人類ほかほか計画

ドラゴンロードの人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

ドラゴンロード(1982年製作の映画)
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NGフィルム量ギネス記録。
でも膨大なフィルムの中から選びに選ばれた完成形という感じではない(詩の暗唱のくだりとかあんまり面白くないのに長っ……)。
実在しないスポーツが二つも描かれる。通常のカンフー映画ではラスボス戦の後「劇終」でいきなり終わるといういつもの常識を打ち破ろうという思いなのか、エピローグにしては本編と何の繋がりもないおまけシーンみたいな感じで描かれる謎の原始的ラグビーみたいなスポーツがひとつ。もうひとつは、セパタクローとハンドボールを合わせたみたいな謎のスポーツで、ここのOKテイクのためにジャッキーはフィルムを注ぎ込んだと思われる。一応ラスボス戦でこのスポーツでの経験が伏線になるみたいなやつはあるものの、例えば『ハリー・ポッター』のクィディッチとか『ファンタスティックMr.FOX』のバシットバットとかとも全然違う、何というかドキュメント感のある長々とした非実在スポーツ描写は、「これは今我々は何の映像を見てるんだろう」って気がしてきて、もはや前衛的な感じすらしてヌーヴェルヴァーグみすらある(「オリジナル版」と「国際版」でラグビーシーンの位置が違ってて、国際版では冒頭に置かれてるらしい。それを聞くと何かしら新趣向を感じさせるオリジナル版の、喧嘩シーンで終わらないっていうほうがいいか)。
ラスボス戦は『ヤング・マスター』に続いてのウォン・インシクだけど、前作に負けず劣らずの名場面になっている。ジャッキーは気合いの入ったバトルを撮るとき相手に蹴りの名手を選ぶことが多いけどやはり見栄えがあるからか。カンフーの型を離れたヤケクソぎみの喧嘩アクションになるのも『ヤング・マスター』や『酔拳2』と共通しているが、この、型を離れた喧嘩アクションが『ポリス・ストーリー』に代表される現代アクションに繋がっていくし、今回のラスボス戦での立体的な場面設定(二階建ての倉みたいなところ)を利用したバトルというのも『ポリス・ストーリー』等に発展していく要素。カンフー映画的時代劇世界のなかで行われる、カンフーからスタントアクションへ、という脱皮であり進化ではあるが、あの『酔拳』や『笑拳』のような草っ原カンフー映画との別離という意味で寂しさもある(後に立体的場面設定にワイヤーアクションをプラスしつつカンフーの型の美を復活させるのがツイ・ハークとジェット・リーの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』、という流れか……)。
ヒロインがかわゆい(途中で物語から関係なくなるけど)。