安堵霊タラコフスキー

アンナ・マグダレーナ・バッハの日記の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

4.7
ストローブ=ユイレの代表作を久々に見たけど、やっぱりこの大胆さはある意味で凄い

最初ピアノの独奏かと思いきや周りで待ち構えていたストリングスも映っていく長回しは素直に感嘆したけど、そこからアンナ・マグダレーナ・バッハと思しき女性のナレーションをつけた楽譜や景色の映像が流れたりバッハのカンタータ等の演奏風景をひたすら長回しで映したりする一方で子供が死んだりする事件があっても言葉だけで済ませて一切描写せず、普通に考えたらふざけるなと言いたくなる構成になってるのだけど、この映画においては徹底ぶりが尋常じゃないため逆に哲学的なものすら感じてしまう

加えてバッハの生活風景のようなドラマ的描写もごく稀に挿入されるのだけど、そのカットのキメと静謐さがさながらドライヤーの諸作品の如く様になっていてそこからストローブ=ユイレが本気になったらどんな映像になるかを窺い知れるため、底知れなさに戦慄してしまった

とにかく規格外で邪道の中の邪道といった具合のスタイルに呆気に取られたり舌を巻いたりすること請け合いな作品だけど、こんなものを衛星放送とはいえかつて電波に流した放送局があるというのも中々に凄い話だ