カトキチ

お茶漬の味のカトキチのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
5.0
ハイソな家庭で育った妻と田舎モンの夫、価値観からすれ違って行く夫婦のやりとりを描く小津安二郎のホームドラマ。

今作ではぐっと寄って行くカメラがユニークで「池の鯉」「光の揺れ」「温泉宿での4人の配置」「会社の中の構図」とあいかわらず画作りも完璧。佐分利信の淡々とした表情、笠智衆のおっさん具合、木暮実千代の小気味良さと役者もいい。あまり小津さんの作品では傑作印を付けられてないように思うが、個人的には好きな小津映画の3本の内の1本。

ベラベラとしゃべりまくる小気味良さから一転、最高のカット割りで見せきる後半30分がとにかくすばらしく、少ないセリフであそこまで感動させるのはさすが映像作家・小津安二郎といったところ。細かなディテールが異様なリアリティを生み、二人で台所に入るシーンは小津演出の真骨頂。

ちなみに旦那が家に帰ってきてからのクライマックスは大谷監督の『とらばいゆ』にそのまんま引用された。
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