ナツミオ

お茶漬の味のナツミオのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.2
WOWOWオンデマンド鑑賞
デジタルリマスター修復版
夫婦の和解を描いた小津安二郎監督の名作。
既婚者、未婚者どちらの方でも楽しく観られる作品。

何事にも鈍感で地味な夫と
良家出身の有閑マダム。※
育ちや価値観の異なる夫婦のすれ違いと和解を、名匠・小津安二郎監督が佐分利信&木暮実千代の共演で描いた感動作。

※"有閑マダム”
有閑階級の夫人。

"有閑階級“(ゆうかんかいきゅう)
社会階級の一つであり、財産を持っているため生産的労働に従事することなく、閑暇を娯楽や社交などに費やしているような階級のことを言う。(Wikipediaより)

英語題 『The Flavor of Green Tea over Rice』

1952年日本作品モノクロ
監督・脚本 小津安二郎
脚本 野田高梧
音楽 齋藤一郎
撮影 厚田雄春
出演 佐分利信 木暮実千代 鶴田浩二 笠智衆 淡島千景 津島恵子 三宅邦子 柳永二郎 十朱久雄 小園蓉子 石川欣一 (特別出演) 上原葉子 (特別出演)北原三枝

(Wikipediaあらすじより抜粋)
丸の内の会社で貿易商社の機械部部長として働く佐竹茂吉(佐分利)は質素で穏やかな生活を好む。一方、妻の妙子(木暮)は裕福な家庭に育ち、地味な夫への不満を募らせている。学生時代の友人たちである雨宮アヤ(淡島)や黒田高子(上原)、姪の山内節子(津島)と共に、夫には内緒で温泉旅行に出かけたり野球を見に行ったりと遊び歩いて憂さをはらしているが、鷹揚な茂吉はそんな妻を詮索することもない。

ある日、節子が歌舞伎座での見合いの席から逃げ出して茂吉のもとを訪れ半日を共にすることになる。妙子はそのことを知って激怒し、茂吉と口をきかなくなったあげく黙って神戸の友人のもとへ出かけてしまう。
一方の茂吉は急にウルグアイでの海外勤務が決まり、妻に電報を打つが妙子は帰ってこない……。

『麦秋』に続いて小津安二郎と野田高梧が共同で脚本を執筆し映画化した作品。地方出身の素朴な夫と、彼にうんざりする上流階級出身の妻、二人のすれ違いと和解が描かれる。

育ちの違う夫婦のすれ違いと和解に本作でも食事シーンが効果的に使われる。

湯河原温泉での有閑マダムたちの温泉旅行での夕食。

それを知らずに、帰宅した茂吉が1人、お茶漬けを食べる。そこへ帰宅した妙子からお茶漬けに嫌悪を示す。これが終盤に向けて効いてくるシーン。

トンカツ屋、ラーメンなどの大衆の食事。

・当時の東京の風景も興味深い。
オープニングは、皇居周辺の道路や丸の内オフィス街。交通量は少なめ。
・羽田空港周辺はほとんど建物が見えない。だだっ広い‼️
送迎シーンは滑走路横に柵があるのみ。その真横から旅客機が離陸する。航空会社は"PAA”("PAN AM” パンナム)。
当時はまだ米軍占領下の時代。

・妙子の有閑マダム振りは、観客からはどう写ったんだろう?

印象のシーン
・後半、南米へ旅立った筈の茂吉が飛行機の故障で引き返し帰宅する。
2人で遅い夕食をとるため、普段お手伝いさんに任せっきりの妙子と茂吉が準備するところ。

茂吉の手際良さと優しさが映しだされる。
妙子がぬか漬けを洗う時に、茂吉が着物の袖が濡れないよう後ろに引っ張ったり、漬物を切る妙子に声をかけたり、ぬか漬けの蓋を閉め、お盆に準備したりとテキパキ。
妙子さん!
お茶漬けを用意するのに、冷蔵庫から立派なハム‼️はいらんでしょ⁈

そして、夕食はあの"お茶漬け”‼️
そして妙子も食べてみる。
2人の会話
"夫婦とはお茶漬のようなものなのだ“
妙子を諭す茂吉。
そこで初めて妙子は結婚生活や夫の心の広さに気付き涙を流し、夫を心から愛するようになる場面はジンワリと涙腺が緩む。

小津監督は後に「ぼくは女の眼から見た男、顔形がどうだとか、趣味がいいとか言う以外に、男には男の良さがあるということを出したかった。しかしあまり出来のいい作品ではなかった。」と振り返っている。(Wikipediaより)

個人的には、推しの原節子の出ていない小津作品でしたが…
夫婦の描き方や若者の結婚観の変化など当時の世相なども面白かったし、楽しく観られました‼️



忘備録
・デジタルリマスター修復版
製作 松竹株式会社

後半終わり近く、節子の友人達が自宅で待つシーンで若干映像がボケたり、茂吉と妙子の会話シーンで茂吉の映像のコマ飛びあり。

・脇役も多彩
岡田登:
……鶴田浩二 - 茂吉の戦死した友人の弟。茂吉が保証人。若く男前。

平山定郎:
……笠智衆 - 茂吉の軍隊時代の部下。歌も披露。
この人の役の幅広さは素晴らしい!売れない漫画家の様な風貌。
昔のパチンコ台は面白いですねー

雨宮アヤ:
……淡島千景 - 妙子の親友。
美人、服飾関係の仕事をして夫には頼らない"職業婦人“。
夫の浮気も手のひらで転がしている感。

山内節子:
……津島恵子 - 妙子の姪(兄の娘)。見合い結婚より恋愛結婚に憧れ。目覚めた妙子より結婚観の説教。ラストの鶴田浩二とのデートに恋の予感!

山内千鶴:
……三宅邦子 - 妙子の兄嫁。節子の母。今回は少し影が薄いがやっぱり美人!

女中ふみ:
……小園蓉子 - 佐竹家の女中。
妙子より気さくな茂吉に気に入られている。茂吉のお茶漬け好きに好感持つ。

大川社長:
……石川欣一 (特別出演) - 茂吉の会社の社長で義父・直亮の友人。
上品な感じがして調べたら、俳優さんでない⁈
当時著名なジャーナリスト。

黒田高子:
……上原葉子 (特別出演) - 妙子の学生時代からの友人。
2枚目俳優・上原謙の奥さん、加山雄三の母。

女給:
……北原三枝(本名・石原まき子)
『狂った果実』(1956)で後に結婚する石原裕次郎と初共演後、日活のドル箱コンビとして23作もの共演作が製作。ブレイク前の出演作品。

・羽田空港の飛行機
尾翼上部
"PAA”
"STRATO CLIPPER“
と明記。
ボーイング社377ストラトクルーザー。プロペラ4発機。
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