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お茶漬の味のTSのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
3.8
【素朴で淡々としてるがどこか良い】80点
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監督:小津安二郎
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:115分
興行収入:約1億990万円
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名前からして興味をそそられる名匠 小津安二郎の作品。恥ずかしながら『東京物語』は未見でして、この傑作と誉れ高い作品を見る前に何作か見ておこうと思い鑑賞。「小津調」とも呼ばれる独特の世界観、カメラ回しには好き嫌いがあると思いますが僕はどちらかというと好きかもしれません。特徴は結構あるのですが、なんといっても不自然なほどに「演者がカメラに向かって話す」というのが最大の特徴と思います。いわばモンタージュの連続といったところでしょうか。同じ俳優、似たような言い回しが多いのも小津安二郎の作品の特徴であり、北野武は「小津安二郎の作品は『東京物語』だけ観れば十分」と言ってる模様。流石にそれは言い過ぎだとは思いますが、要するにどの作品も似通ってるということらしいです。

佐藤茂吉は妻の妙子と普通の生活を過ごしている。妙子とはお見合い結婚で繋がり、妙子は上流階級出身であった。素朴な生活を嫌う妙子は日に日に茂吉な不満を募らせてくるのだが。。

どうやら小津安二郎は家族内で起きるごく普通の出来事、問題を取り扱う傾向があるようです。故に、今見れば素朴すぎて退屈だという意見も飛び交いそうですが、先日の『ALWAYS 三丁目の夕日』でも申し上げた通り、どこかノスタルジーを感じれる日常的な映画が僕は好きなようなので、今作もどことなく好印象でした。今作は、要するに妙子が不満を持ち家出をするのですが、結果的には仲直りするというものでして、普通といってしまえばそれまでです。しかし、小津安二郎はまわりに流されず、一貫して家族の大切さというものを描いたのでしょう。

その淡々とした出来事を独特のカメラ回しで映していくので苦手な人からすると更にたまらないのでしょう。逆に僕はこの淡々さが良かったです。嫌でも会話に集中しないといけないので必然的に夢中になっているのです。
そしてタイトルのお茶漬の効果が抜群であります。最初、上流階級出身の妙子は、お茶漬を食べる茂吉を見下していました。飯に茶を入れるなど下々の民の食べ方である。と。しかし、終盤では仲直りの印として二人仲良くお茶漬を食べるのです。なんと素朴で単純な物語でしょうか。でもこれが良いし、今作にこれ以上の事を求めるのもナンセンスです。似たようなタイトルとして『秋刀魚の味』というのもありますが、これは小津安二郎の遺作であるため、もっと後に見たいと思います。

まあ間違いなく鑑賞後はお茶漬を食いたくなる良い意味で罪な映画です(笑)
TS

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