くもすけ

ノーマ・レイのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

ノーマ・レイ(1979年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

リットは「モリーマグワイヤズ」で炭鉱に派遣された組合つぶしのスパイを描いたが、今作の視点人物は若い女性工場労働者。シナリオは旧知のラヴェッチ・フランクで、共感しやすく、音楽も情感たっぷり。以前のような挑発的な要素は薄いが、真正面から労働運動を描いたリットの到達点だろう。
当初主演候補だったというジェーン・フォンダは最後の監督作で組んで、デ・ニーロにABC教えることになる。

「プレイス・イン・ザ・ハート」でもサリー・フィールドは綿花を摘む役やってて、自分的にはすっかりイメージが定着してしまった。彼女のキャリアについてはこの記事参照
https://www.thecinema.jp/article/758

■Crystal Lee Sutton
1973、ノースカロライナ州ロアノークラピッズの工場でCrystal Lee Sutton(33)が解雇される。理由は掲示板に貼ってあった反労組ポスターをコピーしたため。段ボールにUNIONという言葉を書いて、作業台に立ったのは実話。

サットン一家は何世代にも渡りこの町に住み、繊維産業に関わってきた。サットンは19歳で結婚、翌年出産、翌々年未亡人になる。生涯で3度結婚している。

映画では子持ちシングル同士の二人が川辺で婚約するが、そのセリフが実に率直。
男「料理に文句はいわない。給与袋はそのまま渡す。子供は一人」
女「キスが上手けりゃそれ以外はどうにでもなる」

■米国繊維産業の半世紀
1920年代から1950年代にかけて、白人女性は繊維労働力の少なくとも3分の1を占めており、1960年まで繊維労働力は圧倒的に南部の白人女性だった。米国のすべての繊維製造の4分の3以上がピードモント台地南部(ニュージャージーからアラバマ地域)で行われ、そこではすべての繊維労働者の45%が女性だった。

南部の工場が米国の繊維生産の大部分を担っているにもかかわらず、これらの工場の労働者は、平均して北部よりも賃金が低く、組合組織率もはるかに低かった。

公民権法が可決して工場内部でも有色人種の賃金格差が見直されるようになる。アメリカ繊維労働組合(TWUA)はオーガナイザーをピードモント地域に派遣し、73年までに未払いの賃金の支払い命令を多数取り付ける。一方白人労働者の不安はましていく。
サットンも組合会議に参加するが、最初に教会で行われた会合に同席した白人女性は二人だけだったそうだ。翌日会社で同僚に呼びかけて自宅で会合を開くようになる。

ロアノークラピッズは工場町だ。学校で工場道具の使い方と反労組姿勢を教える。黒人は白人に比べて組合参加率が高かったが、会社はブラック・パワーと結びつけて白人の会社を乗っ取ろうとしていると喧伝して警戒した。

映画でも会社はノーマレイの交友関係や信心をネタに彼女を孤立させようとする。ちなみに派遣されてきた男が結婚していてノーマレイと一線を引いているが、監督いわく彼が各地で現地女性と関係していると思われたくなかったため不能にした、とのこと。

1978年労働者約3000人は組合に賛成票投じ僅差で勝利。交渉は80年までずれ込んで成果をあげたようだが、皮肉にも繊維産業は下り坂を転がり始めていた。

当時繊維労働者は200万人いたが、80年代に入って衰退していく。01年の中国WTO加盟を経て相次いで工場が閉鎖され、09年には40万人まで減る。ロアノークラピッズのJPスティーブンス工場は合併買収を繰り返して生き延びたが、03年閉鎖している。

https://www.heddels.com/2020/01/labor-rights-history-crystal-lee-sutton-the-real-life-norma-rae/

https://southernspaces.org/2014/good-faith-working-class-women-feminism-and-religious-support-struggle-organize-j-p-stevens-textile-workers-southern-piedmont-1974-1980/