りっく

誘拐報道のりっくのレビュー・感想・評価

誘拐報道(1982年製作の映画)
4.5
80年代の日本映画界の隠れた傑作。ショーケンというアクの強い俳優を中心に据えつつ、ショーケンの演技のテンションに周囲も合わせる演出を施すことで、ひとつの誘拐事件に翻弄される群像劇として捌いてみせた伊藤俊也の最高傑作であることは間違いない。

腕時計を元手に金を借り、公衆電話で誘拐した親御さんに身代金を要求するが、時間が分からず10円玉も切れてしまうショーケン演じる犯人の切迫感が凄まじい。減量により目はくぼみ、頬はこけて、ギラギラ感を廃した迫真の演技は、単なる容疑者ではない、人間の情が身を切るように伝わる。

また、とことん追い詰められ尾行する警察に苛立つ両親。報道協定を守りつつも特ダネをいち早くスクープしようとする新聞社。子供の救出と犯人逮捕に全力を注ぐ警察。その誰もがきちんと生活感=実在感を身にまとっているからこそ、多少オーバーアクトでも身につまされる。
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